「畜生! 一攫千金のチャンスだったのに!!」
 ギコはそのまま四つん這いになり、地面に拳を叩きつけて悔しがっている。実はギコにも夢がある。ま
 あしかし、ここで明かすことではないのでそこはとばす。だがその夢の実現の為に、多くの資金が必要と
 なる。この“ビッグチャンス”の話が舞い込んできたときの、ギコの歓喜は、ここから来ていたのだ。も
 ちろん、いろいろな貪欲を満たすという目的でも、その感動は計り知れなかっただろう。

 だが忍者は、皮肉にもオイシイ情報をちらつかせておいて、食いついたところで逃げて行った。なんとも
 ギコの思いを捻じ伏せる行為だった。

「ギコ……本当に、これでもう駄目だ……」

 モララーも、自分の職がある為、これ以上この事件を深追いすることが出来ない。非常に悔しいが、モラ
 ラーが諦めた。

「くそっ……でも、あの様子だと、裏に何か大きな力があるよな……」
 ようやく落ち着きを取り戻したギコが言った。モララーもそれを肯定する。
「ああ、そうだと思う。最も、そんな力は恐ろしくて追求できないけどな」
 ギコは、新たな闘志を燃やし言った。

「尻尾を掴んでやる……! 俺の“夢”の為に!」
「ギコ。俺はもういいよ」
「……えっ?」

 ギコは静かに、だが驚いた表情で言った。
「嘘だろ?」
「俺には職があるんだ。今の職を蔑(ないがし)ろにしたら、自分の生活が危ないんだ」
「何言ってんだ。俺はこれでもちゃーんと生活できてるじゃないか」
「お前と俺は違うんだ!!」
「……」
 ギコはすぐに言い返すことが出来なかった。

「俺には妻と子ども二人、家族が居るんだ。家庭があるんだよ!!」

「な……」
 ギコは一言言うのが精一杯だ。モララーは淡々と続けた。
「養っていく為に、職は必須なんだ。お前みたいに暇じゃないんだ!」
「何だと!」
 ギコは最後の一言に遂にキレた。

「俺だって、この大金を手に入れたら―――確立は低いけど!―――絶対に成功するビジネスをたちあげ
 てみせるんだ! お前のようにヒラで終わったりしないんだよ!」

「……そうかい。俺は降りる。もうご免だ。始めはよかったさ。ちょっとした遊び感覚だったからな。でも
 どうだ。立派な社会人の俺らが……お前はどうかわからんが……こんな漫画みたいな展開にひきずりこま
 れて! 何でかわかんないけど、もうやる気が失せたんだ。俺はもともと冷めやすい性格だし。お前みた
 く情熱オタクじゃないんだ! ―――やりたいなら一人でやれ」
「モララー……」

 モララーは、複雑な心境の中、ゆっくりと自宅へと方向をとった。ギコはそれ以上何も言えなかった。言
 おうとしても、のどに詰まって出てこなかった。

 お互い、心の中に、なにかモヤモヤした物を残しつつ、それ以来二人の交流はパッタリと途絶えた。








    ―――つづく。


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