ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

弥市が自衛隊……

1982年10月8日――ドラマ「3年B組金八先生スペシャル」の台詞より


 1979年10月から1980年3月の半年間に渡って放送された「3年B組金八先生」。日本の学園ドラマの金字塔的な作品であり、その後30年以上続編が製作された。1982年10月8日に放送されたスペシャルドラマ「贈る言葉」は、3年前に卒業した3年B組の生徒が集まり同窓会をするというものである。

 その中のエピソードでは、生徒の一人・大堀英樹氏の演じる九十九弥一 が「警察官か自衛官になりたい」と漏らしたことから話はおかしな方向に進んでいく。それを伝え聞いた武田鉄也演じる元担任の坂本金八は顔面を蒼白にし「弥一が自衛隊……」と呆然とする。それどころか金八自身の口から「僕は、繰り返し繰り返し、命の大切さってのは、生徒に訴えてきたつもりでいたんですけども」とまるで現場で日本国と日本国民のために体を張っている自衛官が命の大切さを理解していない集団であるかのような暴言が飛び出す始末。

 狼狽えるのは金八先生ばかりでなく3年も前に卒業した生徒の進路に、教師たちが大騒ぎ。よってたかって「自衛隊がいかに悪い組織か、間違っているか」「自衛官になりたいと考えるのがいかに誤っているのか」を口々に言い、同窓会は九十九弥一の自衛隊入隊を阻止する会となり、最後は全員で日本国憲法を読んで終わる。子供たちの抱える問題と正面から向き合い、未熟さを尊重しながら問題を解決してきた金八先生が自衛隊は別とばかりに一方的な正義を振りかざし、断罪する。自衛隊という組織、自衛官という職業が公然と差別されていた時代があったという参考になるだろう。

 気になるのは自衛隊を非難する台詞の多くが「自衛隊=軍隊=戦争」の構図で語られていたことである。戦争で酷い目に遭った、他国の人たちにもつらい思いをさせた。だから「戦争は駄目だ」と言いたいのは分かる。しかし、そこから「自衛隊は駄目だ」「自衛官は駄目だ」というロジックになっていくのが理解できないのである。あたかも自衛隊が殺人集団であるかのようなセリフが次々と飛びだし、日本国の平和を守るために自衛官が存在するという視点は徹底的に無視され、公共の電波を使った一方的な自衛隊攻撃が繰り広げられる。自衛隊が憲法違反かどうかについては自分の意見はここでは書かないが、あからさまに憲法で保障された「職業選択の自由」に違反しているし、公共の電波を利用した「特定の思想の刷り込み」のようにしか思えない。それが当然のように受け入れられ、絶対の正義であった時代があったのである。

創作物のセリフから