ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

日本がアメリカと肩を並べた?

キングギドラ――1991年公開『ゴジラVSキングギドラ』より


 1991年に公開された『ゴジラVSキングギドラ』において、キングギドラは昭和版の宇宙怪獣という設定から一新され、23世紀の未来から連れてこられた小動物が、ゴジラを生み出した核実験に遭って怪獣化したものとなっている。その未来人の目的は、23世紀に世界随一の超大国となった日本の国力を削ぐことにあった。

作品が公開された1991年12月に、ソビエト連邦が崩壊。冷戦構造を形作っていた超大国の一角が崩れた。その前年の1990年に、東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が破壊され、東西ドイツの統一が果たされるなど、社会主義国家の敗北が鮮明となっていた頃の映画である。

 ソ連が力を失った後、唯一の超大国として君臨するアメリカが最も警戒しているのが日本である――。当時、そんな戯言を本気で信じた日本人も多かったかもしれない。確かに、当時の日本は世界第2位の経済大国であり、バブルと後に呼ばれる好景気に沸いていた。アメリカでは、ジャパンバッシングと呼ばれる日本排斥の運動すらあった。

 しかし、1990年3月の総量規制から始まった景気減速からバブル崩壊の流れは、『ゴジラVSキングギドラ』の公開を前後して顕著なものとなっていた。また、登場人物のセリフの中で23世紀の未来においてもソビエト連邦が存在しているかのような表現があったが、ソ連は映画公開中の1991年12月21日の独立国家共同体設立、25日のゴルバチョフ大統領の辞任によって、その歴史に幕が下ろされた。

 映画人は預言者ではないが、今の世界情勢を見ながらこの映画を見ると、ある意味滑稽である。何より、国の信用の根幹は国家の安定。すなわち、万全の安全保障体制――軍事力にこそある。日本が、戦後世界第2位の経済大国の地位にまで上り詰めることができたのは自衛隊という軍事力のみならず、日米安全保障条約によって世界最強のアメリカ軍に守られている国の信用に対するこの上ない担保があったことや、そのおかげで防衛費をGDP1%以下という、きわめて低額に収められていたからこそである(ちなみに2015年の日本の防衛費のGDP比は0.99%。日本の周辺の国では韓国が2.64%、中国が1.92%、ロシアが5.39%、アメリカが3.32%となっている)。そんな状況で、なぜアメリカと対等に渡り合えるなどと考えられたのか。

ゴジラとゴジラの敵たちの時代