ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

憲法の掲げる理念は、そんなもんじゃない

漫画「突撃め! 第2少年工科学校」の台詞より


 2000年から2001年にかけて週刊少年マガジンに所十三氏の『突撃め!第二少年工科学校』という漫画が連載された。『名門!多古西応援団』や『疾風伝説 特攻の拓』のような不良――もとい硬派な男たちの物語で人気を博し、1998年から1999年にかけて週刊少年マガジンに掲載された『G-HARD』では史村翔氏(「北斗の拳」の原作などで知られる武論尊の別のペンネーム)の原作で国家の闇で生きる超人兵士を描いた所十三氏が、舞台として選んだのは架空の陸上自衛隊少年工科学校。

 陸上自衛隊少年工科学校は、中学を卒業して陸上自衛隊生徒の採用試験に受けて合格し、任命された者が入校する文部科学省に属さない自衛隊の高校である。陸上自衛隊武山駐屯地に所在し、2010年3月の改編で陸上自衛隊高等工科学校となった。

 『突撃め!第二少年工科学校』は、国を守る男になりたいという思いをもって少年工科学校に入校した少年――国尾守が、寮の同室となった問題児の少年たちと、厳しい訓練や事件を通じて友情を深めていく。自衛隊ものとヤンキーものが融合した異色の作品だったが、結局、単行本四巻で連載は終了した。最後のエピソードで守は、三流週刊誌の捏造によって軍国主義少年と書き立てられ、さらにかねてより検討されいた第二少年工科学校の閉鎖が重なり、窮地に陥る。守は、今や世界有数の武力を持ちながら、戦力の不保持を規定した憲法9条との兼ね合いから軍隊ではないという建前を持たなければならない自衛隊の現状に対し、自分なりの答えを見つけ出す。

 第二少年工科学校の存続を求めて街頭に立ち道行く人たちに呼びかける守たちの言葉に耳を傾ける人たちの間で議論が巻き起こる。現実に即さないから憲法9条を変えるべきとか、憲法9条の理想に従って自衛隊を廃止するべきとか意見が飛び交う中、守は「憲法の掲げる理想は、そんなものじゃない!」と叫ぶ。恒久平和の理想を捨てる必要はない。戦力を持たなくてもよい世界とは程遠いという現実を直視しながら、自衛隊とは何かという疑問を抱き続けなければならないのではないか。彼の出した結論は、戦力の不保持を定めた憲法9条という理念を掲げながら、自衛隊という戦力を持たなければならない現実から目を逸らさず、国民から「自衛隊とは何か」と常に問われ続ける存在でありつづけること。そして、そんな自衛隊に誇りをもって身を置く覚悟を、街ゆく人たちに告げるのだった。

 個人的には、憲法9条を変えるべきか否かというはっきりした意見がない。『突撃め!第二少年工科学校』では、理想か現実かという二元論にとらわれない一つのユニークな意見を示してもらえたように思う。ただ強いて個人的な意見を述べるとすれば、国家の目的が国民の人権・生命・財産を守ることにあるとすれば、憲法9条があったらその目的が達せられないというのであれば変えるべきだと思うし、そうではないというのなら変える必要はないと思う。ただ同時に、守られるべき国民の中には、自衛官が含まれるのも当然のことと思う。ことが起こり、命を懸けて国防の任に当たった自衛官が、事態が収束した後で社会から憲法違反の犯罪者呼ばわりされたり、平時の法で裁かれてはならないと思う。有事は起こってはならないがいつ起こるかわからない。自衛隊は憲法違反か否かという議論は、そろそろ終わりにしてもよいのではないかとも思う。

創作物のセリフから