ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

南スーダンでの自衛隊から韓国軍への銃弾提供問題


 2013年12月21日夜、南スーダンの首都ジュバで国際平和維持活動中の自衛隊部隊に対し、ジョングレイ州州都のボルで活動中の韓国軍部隊から、銃弾一万発の提供を求める打診があった。

 南スーダンは、長年続いた南北スーダン内戦の終結後、6年間の包括的和平合意(CPA)を経て、2011年7月に独立した。日本からは南北スーダン問題に対応するために設立されていた国連スーダンミッション(UNMIS)に2008年10月から司令部要員2名を派遣していた。2011年7月に国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立されると、現地調査を行った上で施設部隊の派遣を決めた。

 現地は長らく続いた内戦により、部族間の対立は深刻で、インフラの整備も全く進んでおらず、マラリアなどの伝染病の危険もある、これまで日本が参加したPKO活動の中でも最も過酷と言われるほどだった。2013年の終わり頃から現地の状況は悪化し、政府軍と反政府軍の戦闘も激化。現地の自衛隊部隊も、インフラの整備はいったん中断し、施設内での避難民への医療・給水支援に切り替えた。

 韓国軍部隊の活動するボル周辺にも戦線が近づいており、避難民も万単位で集まってきていた。万一の事態を想定した韓国軍の現地部隊指揮官は、自衛隊部隊の井川一佐に銃弾(5.56mmNATO弾)の提供を要請。付近の部隊で同型の弾薬を使用しているのは自衛隊のみだったからである。自衛隊側に直接銃弾のやりとりをする事はできなかったため、韓国政府が国連に銃弾の提供を要請し、国連が日本に要請するという流れとなった。

 日本政府は武器輸出三原則や憲法とのかねあいから、PKO活動で武器の提供を求められても応じないという姿勢をとっていたが、安倍内閣は緊急性を鑑み、例外措置としてこの要請に応じた。この対応を受けて、銃弾を受け取った韓国軍の現地部隊長からは、自衛隊の現地部隊に感謝する旨のコメントがあったという。

 この措置を武器輸出三原則をなし崩しにするものだと野党各党や日本国内の一部マスコミは非難したが、それ以上に非難の声を挙げたのは韓国メディアと韓国世論だった。時は、安倍内閣が進める集団的自衛権行使容認の是非に揺れていた頃。日本の集団的自衛権行使容認を警戒する韓国では、「銃弾提供を安倍内閣に政治的に利用された」と言いがかりに近いような論で日韓両政府が非難された。強い非難にさらされた韓国政府は当初、「予備量を確保するために国連に支援要請をした」として、切迫した現地の状況も日本に要請した事実も認めず、日本政府に対して謝意を伝えることもなかった。それどころか、日本がこの件を政治利用していると外交ルートを通じて日本側に「警告」する有様だった。

 それに対して。菅官房長官は24日の記者会見で「日本政府には国連、韓国から要請があった。それが全ての事実だ」と公表し、27日の記者会見で「国連と韓国の要請を受け、政府は人道的、緊急的措置として徹夜で応えた」として韓国政府の反応に強い不快感を示した。1月16日に韓国から現地に補給の銃弾が補給され、自衛隊から提供された銃弾は使用されずに返却された。

自衛隊事件簿