ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

韓国海軍駆逐艦によるレーダー照射事件


 2018年12月20日15時頃。能登半島沖の日本のEEZ(排他的経済水域)内で、平素の照会監視・情報収集任務中の海上自衛隊第4航空群(厚木)所属のP-1哨戒機が、韓国海軍駆逐艦「広開土大王」(クァンゲト・デワン、DDH-971)と韓国海洋警察庁所属の5,000トン級警備艦「参峰」(サンボンギョ、ARS-5001)を視認した。さらに、「参峰」の搭載艇と思われるゴムボート2隻と漁船らしき小型船も確認された。

 平時哨戒任務を続行したP-1哨戒機に対し、「広開土大王」から火器管制レーダーが一定時間継続して複数回照射された。この行為は火器使用に先立って行われるものであり、合理的な理由なく行うことは攻撃の意思を示したとみなされかねない危険な、軍用艦が最も避けなければならない行為である。火器管制レーダーの照射を受けたことを確認したP-1哨戒機は安全確保の行動をとりながら、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHz及び243MHz)の3つの周波数を用いて呼びかけを行ったものの、同艦からこの呼びかけに対する返答はなかった。

 この重大な事案発生に対し、翌21日に防衛省は事実の公表に踏み切る。自衛隊内には「制服組同士での協議する時間をもう少し作るべき」という意見もあったというが、官邸の強い意向があったと伝えられる。外務省を通じて韓国に対して強く抗議するとともに再発防止を求めた。しかし、韓国側は救助を求める北朝鮮の船舶の捜索に使用したものであり「哨戒機を追跡する目的で火器管制レーダーを使用した事実はない」と謝罪を拒否。後になると火器管制レーダーの照射そのものを否定した。P-1哨戒機からの問いかけに対して返答しなかったことに対しては現場の通信環境が悪く無線が聞き取れなかったとした。しかし、同日の現場海域の天候は非常に良く、韓国側の釈明は到底信じがたいものだった。また、自衛隊機が低空で威嚇飛行を行ったと主張し逆に謝罪を求めて、非は自衛隊側にあるとの見解を示した。さらに発生地点も、日本が主張する地点よりはるかに中国寄りの韓国の排他的経済水域内であったと主張している、

 防衛省は12月28日に発生時に撮影した搭乗している自衛隊員の発言や交信内容も含まれた映像を日本語・英語での字幕を付けて動画共有サイトに公開し、翌年1月6日には韓国語の字幕を付けたものを公開した。これに対して韓国側も1月7日に動画を公開して自国の主張を展開したがその多くが12月28日に日本が公表した動画を加工したり、サムネイルは関係ないところで撮影された画像を合成したものであった。1月21日に防衛省は電波を変換した探知音の公開に踏み切る。探知音を解析することでP-1哨戒機の情報収集能力の一端を明かすことになり、探知音の解析によって韓国海軍の火器管制レーダーの特性がわかると韓国海軍と同じ火器管制レーダーを使用している第三国にも迷惑がかかるため、ナマの音を一部加工しての公開であった。



▲防衛省が公開した映像



▲韓国側による反論映像



 防衛省は探知音の公開に踏み切るとともに「本件事案に関する協議を韓国側と続けていくことはもはや困難」という異例の声明を出し、「最終見解」を公開した。この間、複数回の実務者協議が行われ、日本側はP-1哨戒機が収集したデータと、「広開土大王」の火器管制レーターでの使用記録などのデータを突き合わせて共同検証することを提案したが、韓国側は拒否したばかりでなく、日本側の提案を「無礼」と非難し、実務者協議の内容を事前合意に反して、一方的に事実に反する内容を含めて公表するなど不誠実な対応に終始したという。防衛省は情報収集能力を見せつけたうえで、協議を打ち切るという選択をしたわけだが、結局、双方の主張は食い違うばかりで、ただでさえ戦後最悪と言われる状況にあった日韓関係のさらなる悪化、相互不信を内外に示すことになった。

自衛隊事件簿