ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年)

DATE

1995年劇場公開

監督:金子修介(本編)  樋口真嗣(特撮)   脚本 伊藤和典  音楽:大谷幸

キャスト  米森良成;伊原剛志  長峰真弓:中山忍  草薙浅黄:藤谷文子  草薙直哉:小野寺明

観客動員数:90万人  配給収入6億円

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊



【解説・感想】

 1995年3月公開の平成ガメラシリーズ第一弾。当初製作予算は5億(後に6億に増額)で、さすがの金子監督もギャグかコメディー作品にすることを覚悟したらしいが、脚本に『機動警察パトレイバー』シリーズや後の『功殻機動隊 GHOST IN THE SHELL/イノセンス』などで知られる伊藤和典氏、ミカドロイドで特技監督として世に出て、後に『ローレライ』や『日本沈没』などを撮ることになる樋口真嗣氏を迎え、本格的な怪獣映画としてスタートしたという。予算の都合上、スタジオではなく自然発光を使ったロケも、作品にリアリティと臨場感を与えてくれる。同年1月に阪神大震災が起こっており、映画の中に震災における報道に類似した描写が散見されると非難を浴びたそうだが、3月公開の映画が1月の時点で起きた災害の描写を入れることが出来るはずもないので、リアルさを追求した結果として、こうなったものである。

   怪獣ファンからも奇跡的傑作と評された平成板ガメラ第一作。こんな怪獣映画が見たかったという大人の怪獣映画ファンに強く支持された。しかしながら、興行収入、観客動員数において、同時期のゴジラシリーズと比べて、はるかに劣る成績しか残せなかったのは、この映画のリアルさが必ずしも受け入れられなかった結果でもあるように思う。

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【ストーリー】

 プルトニウムを積んだ大型タンカーが、深度3000メートルの公海上で座礁した。それは、海上を移動する謎の環礁だった。タンカーの警備任務に当たっていた海上保安庁の米森良成は、環礁の正体を突き止めるために保険会社による調査に同行する。環礁を発見し調査を開始した米森達は、不思議な金属製の勾玉に似た物が大量に発見した。さらに、謎の石板が発見された。しかし、石板は米森らの目の前で粉々に砕け散り、環礁が突然動き始める。

 長崎県五島列島の姫神島で、新種の鳥が発見され、鳥類学者の長峰真弓の恩師にあたる平田教授の調査団が向かい、失踪する。姫神島の住民も忽然と姿を消し、最後に残された無線で、「トリ」という言葉が残された。長崎県警の刑事とともに、姫神島に向かった長峰は、そこで、『牙があり、羽毛がなく、翼長15メートルはある』巨大な鳥型の生物と遭遇する。その長峰に、政府から鳥捕獲の作戦立案の指示が下りる。長峰の反対は受け入れられず、福岡ドームでの鳥捕獲作戦が実行に移される。

 福岡ドームに鳥をおびき寄せ、麻酔を撃ち込むことに成功したが、米森が福岡ドームに駆けつけ、新たな展開を告げる。推定60メートル以上の例の環礁は、あり得ない速度で福岡ドームへと向かっていた。鳥捕獲作戦は成功し鳥を檻に閉じ込めたが、福岡に巨大な怪獣が出現。福岡ドームへと向かっていった。長峰たちが避難している間に、謎の鳥も怪獣も飛び立ちどこかへと姿を消した。

 『最後の希望・ガメラ、時の揺りかごに託す。災いの影・ギャオスと共に目覚めん』――石板の碑文に残された一文から鳥型の生物はギャオス、福岡に出現した巨大生物はガメラと呼称されることになった。しかし、碑文の警告は無視され、ガメラは殲滅、ギャオスは保護という二重に危険な方針から、ギャオスと交戦するガメラを陸上自衛隊は攻撃し、富士山麓の裾野に撃墜した。陸上自衛隊の集中砲火とギャオスの攻撃によって傷ついたガメラは再び姿を消した。

 保険会社の草薙の娘の浅黄は、米森からガメラの背から発見された勾玉を受け取って以来、不思議な感覚を抱くようになっていた。ガメラとギャオス、陸上自衛隊の交戦が始まるといてもたってもいられずに、戦場と化した富士山麓に駆けつけ、そこで意識を失ってしまう。

 米森と長峰は、恐るべき研究データを目の当たりにすることになった。すべてがメスで繁殖はしないと考えられていたギャオスの染色体の中にオスの遺伝子も含まれており、繁殖の可能性が出てきたのだ。米森と長峰は、全ての鍵は浅黄が握っていると考え、草薙のもとへ向かうが、浅黄はあれ以来眠ったままだった。ガメラもまた、海底火山の傍らで傷を癒し、休息を取りながら最後の戦いに備えていた。そして、翼長約100メートルに成長したギャオスが、大都市東京に飛来する。  

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【映画の中の自衛隊】

 実際に怪獣出現、という事態になったとき、最も重要になってくるのは、そのリスクをいかに評価するかだろう。単に体長50メートルの巨大な生物が泳いでいるというだけでは、自衛隊の出動は勿論、そう簡単に処分するということもできずに、その危険性や保護の方法などをめぐって学者らによる議論が行われるだろう。それは、長期にわたることが予想され、あるいは、捕獲なども実行に移されるかもしれない。漁場が荒らされたりするような場合、漁船などに被害が及ぶことが予想される場合、ホエールウォッチングなどのように観光資源としての活用が検討できるような場合、いったいどこの省庁が主導権を握るかで、その調整だけでも一苦労かもしれない。その間に、怪獣による被害が拡大し、修復不能なほど甚大なものになったとしたら皮肉な話である。

 映画『ガメラ〜大怪獣空中決戦〜』を含め、平成ガメラ三部作では陸上自衛隊・海上自衛隊の協力を得られたものの、航空自衛隊からは主力戦闘機F−15Jが撃墜されるというシナリオに難色が示され、また模型戦闘機が飛び回ることを嫌った製作サイドの意向もあり、ガメラ三部作では戦闘機は落ちていない。そのため、対ガメラ、対ギャオスの主力は陸上自衛隊である。しかし、ガメラへの対応はゴジラに対するよりも困難を極めるだろう。歩いて移動するゴジラに対し、ガメラは縦横無尽に空を飛びまわるのだ。日本の本土上空で撃墜した場合、落下させても構わないような場所を探すほうが難しい。いくら自衛隊とはいえ、日本全国どこに出現しても殲滅できるような戦力を配備するのは不可能だし、ピンポイントで富士山麓に落とすのもたぶん無理だろう。対飛行怪獣相手に本土決戦というのは難しく感じる。

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