ゴジラ対自衛隊 〜映画の中の自衛隊〜

東京マグニチュード8.0(2009年)

DATE

2009年7月〜9月放送

監督:橘正紀

オープニングテーマ「キミノウタ」(歌:abingdon boys school)/エンディングテーマ「M/elody」(歌:辻詩音 )

<声の出演>  小野沢 未来:花村怜美  小野沢 悠貴:小林由美子  日下部 真理:甲斐田裕子 他

内容にはネタばれを含んでいます。  解説・感想  ストーリー  映画の中の自衛隊

【解説・感想】

 2009年7月から9月までフジテレビのノイタミナ枠で放送されたテレビアニメ。大震災に見舞われた東京を舞台に、一人の少女の奮闘と成長を描いている。「家族に会いたい、と初めて思った。」をキャッチコピーに、少女の視点で物語は進んでいく。当時は注目のアニメだったらしく、第1話の視聴率5.8%はノイタミナ作品の初回視聴率としては最高だった。平成21年度(第13回)文化庁メディア芸術祭アニメーション部門において優秀賞を受賞するなど、評価の高い作品である。本作は東京消防庁や陸上自衛隊、内閣府の啓発ポスターにも起用された。

 東京消防庁、陸上自衛隊、海上保安庁、東京DMAT、東京都立墨東病院といった現実の震災が起こった時の救援を行う各機関が取材協力をしており、よりリアルな震災状況が描かれている。演出上の都合上実際と異なる場合がある旨がテロップで告知されているが、現実の震災が起きた時に、自分と自分の大切な人を守るためにどう行動すればよいか、実際に外出先で震災に遭った時に自力で帰ることを選択するべきか否かも含めて、考える良い材料になるだろう。2012年が舞台となっているが、同じ年に東日本大震災が発生した。その為か、現在では半ば封印された作品になっているようだ。

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【ストーリー】

 主人公の小野沢未来は反抗期真っ盛りの中学1年生。携帯を手放せない今時の女の子で小学3年生の弟の悠貴にケータイ星人とからかわれている。2012年7月21日。夏休み初日、親からどうせ何の予定もないだろうと悠貴の付き添いを押し付けられ、一緒にお台場のロボット展を見に来ていた。はしゃぐ弟と不機嫌な姉。ようやく一人になれた未来は「毎日毎日ヤなことばっかり…。いっそのこと、こんな世界、壊れちゃえばいいのに」と掲示板に書き込む。その時、未来の――誰も経験したことのない最大震度7の揺れが東京を襲う。

 東京を襲ったのは東京湾北部を震源とするマグニチュード8.0の直下型地震。悠貴を探しに半壊したビルに戻った未来は、バイク便ライダー日下部真理の力を借りて悠貴を見つけ出す。震災の被害は甚大で様変わりした東京の姿に呆然とする未来は、もう両親にも会えないのではないかという恐怖に震えた。避難する未来の目の前で、レインボーブリッジの崩落、東京タワーの倒壊といった絶望的な出来事が次々と起こる。心を決めた未来と悠貴は、真理の力を借りて世田谷の自宅へ帰るために歩き出した。その道のりの中で、未来は自分にもできることを模索するようになる。

 

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【映画の中の自衛隊】

 劇中、陸上自衛隊が避難所となった芝公園で災害派遣で展開している描写がなされている。また米海軍第7艦隊のドック型揚陸艦による各地への被災者の輸送も行われているようである。作品は一人の少女の視点で描かれているので、特定の組織に肩入れするような描写はないが、終盤、自衛隊の輸送車に負傷者として乗車する場面もあり、東京中を自衛隊車両が走り回っているのだろう。

 現実に発生した2011年3月11日の東日本大震災では、自衛隊創設以来初めて予備自衛官が招集され、発生から2ヵ月にわたり1日に10万人強の自衛隊員を投入して救助・救援活動に尽力した。2011年末まで延べ1058万名の自衛隊員が動員されている。自衛隊が地震や津波、原発事故の対応に忙殺される中、中国やロシアをはじめとした周辺国は、自衛隊の危機対応能力や警戒態勢を探るかのように軍事偵察を活発化させた。

 本作では東京が壊滅的な被害を受けているが、各行政機関の機能は生きており、警察・消防・自衛隊らによる迅速な救出・救援活動が行われているようである。マスコミによる情報提供も積極的に行われており、パニックは起きていないようである。しかし、劇中で描かれている被害は、死者18万人、行方不明者15万、20万人を超える負傷者に約650万人の帰宅困難者としている。東北地方より遥かに人口の多い首都圏や東海地方で、東日本大震災と同規模かそれ以上の震災が発生した場合、果たして現在の自衛隊の人員で対応できるのか。また、日本の中枢である永田町・霞ヶ関が壊滅し、状況によっては総理大臣、防衛大臣、東京都知事らが死亡しているとき、速やかに自衛隊が出動し、国民の生命及び財産を守れるのか。通信網が寸断された中、被災者に正確な情報を提供できるのか。数字としては最悪に近い状況を想定している割に、アニメだからか描き方が甘く感じる。

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