DATE
1978年劇場公開
監督: 佐藤純彌 原作:森村誠一
キャスト 味沢岳史:高倉健 長居頼子:薬師丸ひろ子 越智朋子/美佐子(二役):中野良子 北野刑事:夏木勲 大場一成:三國連太郎 大場成明:舘ひろし 皆川二等陸佐:松方弘樹
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内容にはネタばれを含んでいます。 解説・感想 ストーリー 映画の中の自衛隊
【解説・感想】
森村誠一が映画化を前提に書き下ろした原作小説を、角川書店が映画化した作品。いかにも角川映画が元気だった時代の作品という感じの映画である。原作には自衛隊との絡みはなく主人公も自衛隊とは関係なかったが、映画版ではラストに元特殊部隊員の主人公と、特殊部隊との戦闘が描かれている。そういうシーンを入れたかったがための改変だったのだろうと思うが、そのせいで物語最大の謎であり主人公の行動の中心にあった山村の集落で起きた猟奇殺人、一つの街を支配する大場一族との対立、前述した自衛隊との戦闘と、わりとばらばらに寸断しているような印象を受ける。大味な作品だとは思うが、それでいて物語が全面的な破綻をきたしていないのはさすが。
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【ストーリー】
自衛隊に極秘に設立された特殊部隊。国を陰から守る特殊部隊の隊員たちは強靭な精神と屈強な肉体を持ち、米軍の教官から指導を受ける戦闘のプロフェッショナルである。そんな特殊部隊員の一人、味沢がサバイバル訓練中に東北の山村で、集落一つが全滅する猟奇殺人事件に遭遇した。その中で、一人の少女を救出する。
1年後、自衛隊から離れた味沢は、唯一生き残っていた少女・頼子を引き取り、ある目的のために地方都市で保険の外交員をしながら暮らしていた。都市を支配する大場一族の不正行為を暴くために動いていた新聞記者の美佐子との出会いによって、味沢は巨悪との争いに巻き込まれていく。
味沢の努力も空しく、美佐子は殺害され、主犯である大場成明を殺して復讐を果たしたものの、集落を壊滅させた猟奇殺人事件の捜査をしていた北野刑事に逮捕される。ところが、味沢を監視していた自衛隊特殊部隊は味沢の口から特殊部隊の秘密が漏れることを恐れ、頼子や北野刑事とともに味沢を拘束し、自衛隊演習場に監禁する。味沢は拘束を外して脱出。頼子を守りながら、特殊部隊との最後の戦いに挑む。
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【映画の中の自衛隊】
自衛隊の扱いが“悪役”であったため、当時の防衛庁からは一切の協力が受けられなかった。自衛隊が協力してくれないなら、他所の軍隊に頼めばいいとばかりに、演習の場面では、アメリカのカリフォルニア州の州兵が訓練で使用している施設で撮影された。そのため、陸上自衛隊とペイントした米軍の戦車M48パットン(自衛隊は未採用)や大型ヘリ・CH-47チヌーク(自衛隊が採用したは1986年)などの兵器が登場してくる。
また、自衛隊員が持っている自動小銃もAR-18という銃である。東側諸国の傑作小銃であるAK-47のように、経済規模の小さい西側寄りの諸国のための、安価な自動小銃として製造され、その後の自動小銃の設計思想にも多大な影響を与えた自動小銃であるという。現在、自衛隊が採用している89式自動小銃の設計・製造にも影響を与えたとされる。余談だが、かつて豊和工業でAR-18のセミオートマチック専用のAR-180がライセンス生産されており、豊和工業で生産され海外輸出されたAR‐180が、IRA(アイルランド共和軍)のシンパによってアイルランドに送られ、テロ活動に使用されていると国会でも問題になり、生産が打ち切られた経緯がある。
作中、特殊部隊員が命令に対し「レンジャー」と返答する場面がある。現実の陸上自衛隊のレンジャーでは、上官からの命令に対し「レンジャー」と答える。今では結構有名になった豆知識だが、当時はそんなに一般的な知識ではなかったと思うので、自衛隊についてはよく調べられたうえで製作された映画だったのだろうと思う。
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