111日 沈黙と言葉と詩

 我々が最も愛する詩は常に沈黙と言語との微妙な契合でなくてはならない。怒りも笑いも嘆きも悦びも、なべての感じはその極まるとき疑然として黙す。例えば人の情けに感じてもくどくしく礼を述べる間はまだ真に迫っていない。真実に骨身に徹して有難かった時には、我らはただ息づまるばかり迫った沈黙のうちに、熱い涙の一滴をふるえる手の甲に落とすのみである。若しそのときに噛みしめた唇から微かな一言が漏れたならば、その言葉こそ世に最も誠なる言葉と言わねばならない。感激の沈黙は絶対である。その絶対なる沈黙に点ずる霊語、これは詩はその極致とする。

               東洋の心