8.       景行天皇陵東南

うま(さけ)三輪(みわ)の山 (あお)()よし奈良の山の山のまに

い隠るまで 道のくまいさかるまでに つばらにも見つつ()かむをしばしばも 見さけむ山を心なく雲の隠さふべしや

        額田王 万葉集 巻1-17 

 懐かしい三輪の山、この山が奈良の山々の間に隠れてしまうまで、また行く道の曲がり角が幾つも幾つも後ろに重なるまで充分に眺めて行きたい山である、度々振り返っても見たい山であるものを、無情にもあんなに雲が隠してしまってよいものだろうか。

 反歌

 三輪山をしかもかくすか雲だにも

     心あらなむかくさふべしや

         額田王 万葉集 巻1-18

  名残惜しい三輪山をどうしてあんなに雲が隠すのだろうか。せめて雲だけでも情けがあって欲しいものだ。