114日 宗教

 宗教はすべて個人の霊魂の問題である。生の暗黒と妄動とから救われて、宇宙と人生における自己の安立と調和とを発見し、人類の平和と幸福とが期待せられる永遠の光を仰ごうとする感情であり、本能である。宗教の持つ智慧も詩もここに根ざすものである。

処が、その大切な個人の霊魂は次第に影を潜め、そういう霊魂に輝く勝れた個人はだんだんなくなってゆきつつあるのが現代の事実である。経済も、政治も、教育も、戦争も、何も彼も機械化し一般化した。個人の代わりに組合や政党や階級というような集団が生活単位になって、その集団化の中に個人は次第に自己を喪失してゆく。    漢詩読本