五倫・五常 その2 

五倫・五常は江戸時代に日本人の心に深く浸透した。当時の学問といえば、読み書きそして庶民においては算盤である。また各階層において心の学問、すなわち物の見方考え方を学んだ。中心となるのは儒教。武士階級では、中国の宋代にしゅき朱熹がおこした朱子学が官学となる。朱子学は人間の欲望を抑え理想に傾きがちであった。

 空理空論の弱点を補ったのが陽明学。中国、明代の王陽明が唱え、心即理を根本におく。
「ちこうごういつ知行合一」説は、知識と行動は一体のものであるとし、幕末の志士らに影響を与えた。
思想家としては、中江藤樹や熊沢蕃山がいる。案外、知られていないのが「ちりょうちー致良知」である。「良知」は孟子が道徳的判断力として使った言葉だが、王陽明はそれを発展させ「天理」とした。天理である良知の発揮が「致良知」。「天誅」という行動概念はここから起こったものである。

 自由な人間性を肯定する学問がおき、国学が中期から後期へかけて盛んになる。
「万葉集」や「古事記」を通じて、古代の人々が天皇を尊重し「もののあわれ」を解するのが理想的な日本人だとする契沖、賀茂真淵、本居宣長がいる。

町人武士大名にまで影響を与えたのが、大阪の石田梅岩の石門心学。名は興長、通称は勘平、号が梅岩。梅岩が「都鄙問答」を著した。儒仏神の思想を取り入れて、町人の日常生活の中に自己修養を体系化した。人間の生きる道、士農工商のそれぞれの道、更に乞食の道まで言及している。人のものを盗まないのが乞食道だという。

論語を引用し「君子は困窮しても道を守る。小人は困窮すれば道をはずれる」と説く。

中国・韓国等、「中華」と威張る両国の道義なき国民性、彼らの不法入国、集団スリや窃盗、その恥や道義の欠如を何と思っているのか、面罵したい思いがある。

 商人には商人道がある、現代の商人、即ち企業家の一部は先人の学問の深さを知らぬようである。貪れば家を滅ぼすとは会社を滅ばす事と同義語であるのだが。

商人の道は、倹約、勤勉、蓄財。欲を離れ仁を心がけ正しい道に適えば栄えることができると教えた。

明治維新後、徳川慶喜が、後嗣ぎの家達に、法学や商学は枝葉の学問で、心を修める学問に力を入れよと諭した。奇跡に近いほど早期に新国家に導いた最後の将軍の偉大なる言葉である。
日本人は実に偉いと思う。
             平成19年1月  徳永圀典