12日 婦徳

 太宗の夫人・文徳皇后は、こんな女房も世の中にあるかと思うほど立派なものです。そして太宗にも心酔していた。太宗が病気にでもなると、いかなる持女よりも医者よりも自らが献身的に看護された。いつでも着物の中に毒薬を持っていたと書いてあります。その皇后が不幸にして病気で太宗よりも先に亡くなった。太宗が枕頭にあって心痛していた時、最後を覚悟して慇懃に別れを告げ、枕の下から薬を出して、「私はあなたがご病気になられた時、もし万一のことがあったら、その場でお後を追うつもりでありました。これがもう要らなくなりました」と言って見せた。太宗は非常に感動した。ちょっとこういう皇后は類がない。

               禅と陽明学