モースの日本体験記 

エドワード・シルヴェスター・モースは明治期に来日して大森貝塚を発見したアメリカの動物学者である。彼の日本印象記録の一部をご披露する。 

「日本には、正直、節倹、丁寧、清潔、その他わが祖国に於いて(キリスト教徒的)とも呼ばれる道徳の全てに関しては、一冊の本を書くことも出来るくらいである」。 

モースはこのように日本人のことを絶賛し続けて言う。 

「これ等の美徳は多くの史上の偉人が指摘するところです。富める、貧しいに関わりなく、素晴らしい道徳規範を身につけていた日本人に世界の人々は驚き、そして自らの国の不道徳には、逆に恥じ入り愕然というケースがことのほか多いものです。」 

「店を荒開けっぱなしにいて出で行く商店主(モースは誰かに盗られないかと心配する)、机の上に小銭を置いたままにしても召使は一切手に触れない。」 

「クリーニングに出す為、コートを持っていった召使は、若干の小銭がポケットに入っていたのに気づき持って来た。」

などの体験をし、

「人々が正直である国にいることは実に気持ちがよい」と云っている。 

「盗み」などの犯罪が皆無であることに驚嘆します。 

一方、アメリカでは、戸外の寒暖計はねじ釘で壁に止められ、柄杓(ひしゃく)は噴水に鎖で結びつけられていました。盗難防止のためです。公共の場から石鹸が盗まれるため、卑しいけちな盗みから保護すく容器を壁に取り付けた液体石鹸なるものが発明されたのだとも言う。 

発明王のエジソンは、

日本人従業員の岡部青年に対して「自分の子供達は、しょっちゅう自分の周りから金品を勝手に持ち出していくが、この日本の青年はテーブルの上にお金が置いてあっても、手につけることは全く無い」とその真面目さと信頼できる人間性を賛嘆している。 

このような「盗み」をしないことは、古くから日本の美点として称えられ、世界の偉人たちは一貫してその点に感心しています。 

だが、それこそ日本人には逆に不思議に思える。日本では当たり前の行いも外国では素晴らしい賞賛になる。

 徳永日本学研究所 代表 徳永圀典