ここで(りょ)(しん)()の略歴を紹介する。

シナは明末の人、1536-1618、進士の試験に合格し

上級官僚となり出世したが、それを妬む役人の讒言や

中傷に会い、あっさりと地位を捨てて田舎に帰る。専

ら子弟の教育に専念した。

呂新吾の学問の基本は、徹底して自己であった。自己

を究め、律することで社会に生かすと言う陽明学の思

想に立脚している。

新吾の名を「心吾」としたのも己れの心を凝視して立

つという姿勢の表れである。

独りを愛し「(ほう)独居士(どくこじ)」と号した。書斎に対し偽善を

去るという「(きょ)偽斉(ぎさい)」と自ら呼んだのは新吾の姿勢の

表現である。

安岡先生は、呂新吾の著書「呻吟語」を講義され「呻

吟語を読む」にまとめられている。

本稿はそれを基礎にし岫雲斎流にしている。