ちゃんちゃら可笑しい、

民主代表選お粗末な空論、政権交代などおこがましい

2015.01.25  大前研一氏

 民主党の岡田克也新代表は、「国民の皆さんから政権を担える政党だと思ってもらえるよう、公平公正かつ、しっかりとした戦いを安倍自民党とやっていく」と自民党との対決姿勢を示した。26日召集の通常国会で安倍晋三政権に論戦を挑む。

 今回の民主党代表選はポイント制で争われ、1回目の投票では細野豪志元幹事長が国会議員票と地方議員票を集めて298ポイントでトップに立った。岡田さんは党員・サポーター票は最多だったものの、294ポイントで僅差の2位だった。しかし、決選投票で長妻昭元厚生労働相陣営の国会議員の半数以上が支持に回った。

 2012年の自民党総裁選でも、1回目の投票では地方票を集めた石破茂さんがリードしたが、国会議員の決選投票の結果、安倍さんが逆転した。これに似た展開だった。この民主党代表選、05年以来の岡田さんの再登板も含め、すでにどこかで体験したようなデジャブを感じて面白くなかった。

 細野さんについて、政治的な能力があるのかどうか今回の議論を聞いている限りでは、私にはわからなかった。ただ、私が福島第1原発事故の数カ月後、当時、原発担当大臣だった細野さんから頼まれて“1人事故調”をやったとき、細野さんは毎週時間をとってくれて、私の話を真摯に聞いていた。学んでいこうという意欲があった。吸収する力もあると感じた。そういう意味で、私は細野さんが代表になったほうが民主党は変わると思っていた。

 しかし、細野さんには脇の甘い部分があったのも事実。立候補者3人が参加した討論会では、野党再編に積極的な細野さんが再編論を封印していたため、岡田さんが「昨年暮れの衆院解散直前に、細野さんから維新の党との合併を持ちかけられた」と暴露した。

 そのとき、細野さんは「維新の側から『関西を切り離すことも考える』という話が来た」と語った。その後、「『関西切り離し』の話は維新側から出たのではない」と発言を修正した。

 このときの一連の細野さんの態度は少し卑屈だったと思う。衆院選を直前に控え、「勝つためにはそのくらいのことは考えた。しかし、選挙の結果を見たいまは違う」と堂々と言えばよかったのだ。岡田さんもしつこすぎたが、細野さんも女々しすぎたと思う。

 岡田さんの任期は17年9月末まで。しかし、私は期待していない。岡田さんは05年9月まで代表を務めたが、能力のある人だったら、その間に何か別の施策ができたのではないか。岡田さんは「政権を担える政党」と語っていたが、担わしてみたら悲惨な結果だったいまさら民主党に政権を頼みたいなんて思う人は、ほとんどいないんじゃないか。むしろ暴走しがちな安倍自民党に対する牽制機能を期待する人がほとんどだろう。

 かつての社会党や民社党は健全野党として自民党を攻撃し、政権を失いたくない自民党が随分慎重になったことが何回もある。その繰り返しを見せているうちに振り子が戻ってくることがあるかもしれない。いまのメンバーで、今回の代表選のようなお粗末な議論しかできない政党が政権交代をうんぬんするのはおこがましい。

 「純粋な民主党に戻そう」とか「民主党の原点に立ち返る」とも言っていたが、そもそも民主党という政党は、かつての社会党や民社党の寄り合い所帯と自民党の一部がくっついただけ。それが小沢一郎さんに引っかき回されたあげく、一部を連れ去られて悲惨な状況になった。

 したがって、今回の代表選の間に何回も聞いた「民主党を磨いていくことが重要だ」という議論からして、とんでもない空論だと私には思えた。

「大前研一ライブ」から抜粋。