131日 自警 解説

人は、他動物の及ばぬ言語文字を創め、知能を(ひら)き、機械を作って発達してきたが、福かと思えばそこにまた禍が伏していて、これより(いつわり)が伝えられ、奸智(かんち)邪智(じゃち)が働き、破壊が(たくま)しくされ、文明とは何ぞやというような深刻な懐疑も生ずるに至った。今にして我等は先ず何を学ぶかより、いかに学ぶかの根本的反省を肝腎とし、学問の本業に徹せねばならぬ。

足代弘訓は伊勢の神官、博学にして慷慨(こうがい)()(せつ)があり、経綸(けいりん)を蔵し、書生を愛して厭倦(えんけん)の色がなかった。国史(こくし)類聚(るいじゅう)を始め、著書千余巻、和歌数万首。天保中、宮中に召されて書を講じるなど、敬慕すべき風格の士である。            古典を読む