歴史を学ぶとは-先祖が生きた歴史を学ぶこと

歴史を学ぶとは、
過去の出来事を知ることだと考えている人が多いかもしれないが、必ずしも正しくない。
歴史を学ぶのは、過去に起こった事を通して、過去の人がどう考え、どう悩み、問題をどう乗り越えてきたのか、つまり過去の人はどんな風に生き抜いたのかを学ぶこと。

これからやるのは、日本の歴史。
これは、言い換えれば、我々と血のつながった先祖の歴史を学ぶうこと。
最も身近な先祖は、我々の両親だ。こうして世代を遡れば先祖の数は増えつづけ、日本列島に住んでいた人たちは、共通の祖先である。30代遡れば10億人の先祖。
日本の歴史は、どの時代を切っても、すべて我々の共通の先祖の歴史である。

日本文明の伝統

世界のどの国民も、それぞれ固有の歴史をもっている。日本の国土は古くから文明を育み、独自の伝統を育てた。
古代において、日本は、中国に出現した文明から謙虚に学びつつも、自らの伝統を失うことなく、自立した国家をつくりあげ、着実に歴史を歩んできた。
そのことは、今に伝わる文化遺産・歴史遺産を観察すればよくわかる。
欧米列強諸国の力が東アジアをのみこもうとした近代にあっては、日本は自国の伝統を生かして西欧文明との調和の道を探り出し、近代国家の建設と独立の維持に努力した。

しかし、それは諸外国との緊張と摩擦をと伴う厳しい歴史でもあった。こうした先祖のたゆまぬ努力の上に、世界でも最も安全で豊かな今日の日本がある。

自分のこととして想像する
歴史を学ぶ時に大切なことは、それぞれの時代に先祖が直面した問題を知り、その同じ問題を自分のこととして想像してみること。そうすると歴史上の事実が、人々の願いや動機、事実と事実のつながりとして洞察できる。
歴史を深く探求するにつれて、思わぬ発見や、多様な見方にもふれることができる。

歴史を学ぶとは、未来に開かれた、過去の人々の対話なのである。

             平成2214

                               徳永圀典記