1日 |
117句 |
たとえ 悪をなしたりとも ふたたびこれを なすことなかれ 悪のなかに たのしみをもつことなかれ 悪つもりなば 堪えがたき くるしみとならん
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万一、悪をなしたとしても、決して二度と悪事をしてはならない。悪事の中に楽しみを見いだしてはならぬ。悪事の積み重ねは苦しみにほかならないからだ。
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2日 |
118句 |
もしひと よきことをなさば これを また また なすべし よきことをなさず たのしみをもつべし 善根をつむは 幸いなればなり
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もし人が善いことをしたら、再びこの善事をしなくてはならぬ。そして善事を続ける欲を起こさねばならぬ。なぜならば、善い行為は楽しみだから。
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3日 |
119句 |
悪の果実いまだ 熟れざる間は あしきをなせせる人も 幸福を見ることあるべし されで 悪の果実 熟するにいたらば その人ついに 不幸に逢わん
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悪人も自分のなした悪事がまだ熟さない間なら却って善福を見る場合もある。悪事が熟してしまえば禍いあるのみ。
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4日 |
120句 |
善の果実いまだ うれざる間は 善事をなせる人も わざわいを見ることあるべし されで 善の果実 熟するに至らば 善人は幸福を見ん
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善人も自らの善事が熟さない間は禍悪に遭遇する。しかし、やがて熟するや彼は幸福に遭遇するであろう。
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5日 |
121句 |
「その報 よも われには来らざるべし」 かく思いて あしきを軽んずるなかれ 水の滴 したたりて 水瓶をみたすがごとく 愚かなる人は ついに悪をみたすなり
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私にはどんなことがあろうとも悪の報いはないだろう。このように悪を考えてはいけない。一滴、また一滴と水が滴り落ちて終に水がめが満つるように愚かな人は少しづつ悪を満たしてしまう。
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6日 |
122句 |
「その報 よも われには来らざるべし」 かく思いて 善きことを軽んずるなかれ 水の滴 水瓶をみたすごとく 心ある人は ついに善をみたすなり
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私にはどんなことがあろうとも善の報いはないだろう。このように善を考えてはいけない。一滴、また一滴と水が滴り落ちて終に水がめが満つるように心ある人は少しづつ善を満たしてしまう。
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7日 |
123句 |
財貨多くして 伴侶すくなき商旅 危懼ある道を さくるがごとく 長寿を望むひとの 毒物をさくるがごとく かくのごとく あしきことさくべし
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多くの財貨を携帯し同伴者の少ない商人が盗難の多い道を避けるように、生命を大事にする人も毒を避ける。このように悪も避けねばならぬ。
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8日 |
124句 |
手に若し瘡なくば その手に 毒を採るべし 瘡なきものを 毒はそこなわず かくのごとく 自己にさわりなきものには 悪もつてに起らず
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手に傷がなければ手で毒を採ることが可能だ。毒は傷がなければ毒ではない。同様に悪も悪をしないものには存在しないものである。
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9日 |
125句 |
汚れなきひと 浄くして執着なきひと かかるひとを誣いなば まこと 風にさからいて 微塵をちらすがごとく わざわいかえって おろか人の上にあらん
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他人を害する心ない人、清らかな執着ない人に逆らうのは、それは逆風に飛ばされた塵のように愚かな自分に帰ってくる。
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10日 |
126句 |
あらゆるものは胞胎に生れ あしきをなせる者は 悪処にゆき 行いよきものは 福処にゆき 諸漏のつきたるものは 涅槃に入るなり
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一部の人は母胎に生まれ帰り、悪業をした人は地獄に落ち、善行をした人は天に生まれ、欲望から目覚めた人は精神的自由の悟りを得る。
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11日 |
127句 |
虚空にあるも 海にあるも はた 山間の 窟に入るも およそ この世に 死の力の およびえぬところはあらず
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空にも海にも はたまた山の洞窟に逃げようとも悪事から離れられる場所はこの世には無い。
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12日 |
128句 |
虚空にあるも 海にあるも はた 山間の 窟に入るも およそ この世に 死の力の およびえぬところはあらず
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空にも海にも はたまた山の洞窟に逃げようとも死から離れられる場所はこの世には無い。
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13日 |
第十品
129句 |
すべてのもの 刀杖を怖れ すべてのもの 死をおそる おのれを よきためしとなし ひとを害い はた そこなわしむるなかれ
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誰でも剣や死を怖れる。だから他人を自分と同様に決して殺してはならぬ。決して傷つけてはならぬ。
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14日 |
130句 |
刀杖をおそれ 生命ながらうこと これすべてのひとの のぞむところなり されば おのれを よきためしとなして ひとを害い はた そこなわしむるなかれ
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どんな人も刀には恐れ生きることを喜び愛している。だから他人をわが身と同様に決して殺してはならぬ、傷つけてはならぬ。
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15日 |
131句 |
すべてひとは 幸福を好む されば おのれ自らの たのしみを求むる人 もし刀杖もて 他人をそこなわば 後世にたのしみあるなし
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幸福を願い求めている人々を杖棒で傷つけるような人は自分がいくら幸せを求めても未来には幸福を得ることは出来ない。
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16日 |
132句 |
すべての人は 幸福をこのむ されば おのれ自らの たのしみを求むる人 他人を害うことなくば 後世にたのしみをえん
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幸福を願い求めている人々を杖棒で傷つけるような事をしない人はやがて未来の幸福を得ることができるであろう。
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17日 |
133句 |
粗なる ことばをなすなかれ言われたるもの また なんじにかえさん いかりに出づることばは げに くるしみなり 返杖かならず 汝の身にいたらん
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どんな人にも粗雑な言葉を使ってはならぬ そのような言葉を受けた人は荒々しい言葉を返すだろう。怒りの言葉は本当に苦しみだ、その言葉に対する反抗の杖は必ず汝にふりかかってくるだろう。
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18日 |
134句 |
いかなることばをきくとも なんじ もし 毀れたる鐘のごとく 黙しなば かくて汝に いかりは来らざるべし これすでに 涅槃に達れるなり
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どのような言葉を聴こうと、毀れた鐘のように、もし何も言わないでおるならば、既に悟りに到達していると言える。
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19日 |
135句 |
牧牛者の杖をもちて 牧場に 牛をかりたつるごとく かく 老と死とは 生きとし生けるものの 生命をかりたつ
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牛飼いが杖で牛を牧場の中に追うように 老いと死とは我らの命をその終末まで追い立てる。
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20日 |
136句 |
もろもろの あしき業をなすとも おろかの人は ふかくさとらず まこと 智すくなきものは 火にやかるるごとく おのれの業により 自らくるしむなり
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愚かな人間は悪い行いをしてもそれを自覚しない。智慧のない人は火に焼かれるように自分の行為に悩まされる。
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21日 |
137句 |
人もし つるぎなく 反抗せざる人を おのれ刀杖もて きずつけんには まこと すみやかに つぎなる十種の一つに 陥らむ
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杖を手にしない人々、他人を害せんとする心のない人々の中で、杖で他人を害するのは次の十種の生活状態の中のどれか一つに墜ちてゆくものだ。
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22日 |
138句 |
はげしき痛み おとろえ 身のきずつき または 重き病い もしくは 心の狂乱
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激しい痛み、痩せ衰える老い
肉体の損耗や重い病い また精神の狂乱
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23日 |
139句 |
または 王のわざわい おそるべき誣言 親族のほろびと 家財の喪失 他を害う人は これらの不幸を受けん
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王者からの迫害 厳しい判決 一族の滅亡、財産の喪失
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24日 |
140句 |
かかる人は また 霹靂のために 家をやかる 智に乏しき人は 身やぶれてのち 悪処に生れん
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或いはまた火のために家が焼かれる、肉体が滅びても智に劣る人間は地獄に落ちる。
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25日 |
141句 |
たとえ苦行者 裸行するも 髷に結うも はた 身に泥炭をぬるも 食物をたち 地に臥すとも 身に塵埃をぬるも 蹲まりて動かずとも 欲を離れざる衆生は きよめらるることなし
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苦行に裸でいたとて、頭髪を編んだとて、汚いことをしていたとて、断食したとて、また路地に寝ていたとて、身体に塵埃がまみれていたとて、またうずくまっていたとて、盲目的な欲望から離脱していたい人々を清らかにすることはできない。
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26日 |
142句 |
たとえその身に 美しき装なりをつくるとも 行うところ平等に 心しずかに調い つつしみ深く 行い浄く 生命あるものに 刀つる杖を加えざるもの 彼こそは婆羅門 沙門 比丘なり
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例え身に美しい衣装をまとっていても、平等な心で暮らし、静かであり、慎み深く、勤しみ励み清い生活と行為をしており、また生けるものを殺傷しない人は正に婆羅門でありも修行者であり比丘である。
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27日 |
143句上 |
自ら愧をもちて おのれを制し ひとのそしりを 意とせざること 良き馬の 鞭を意とせざるがごとき かくのごときのひと この世に多くあらんや
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廉恥に富み、他人の批難をあの良馬が鞭を激励と取るように意に介しない人はこの世に少ない。
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28日 |
143句下 |
まこと 鞭をうけたる 良き馬のごとく なんじら また 専心努力せよ
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この良馬のように、ひたすら努力して熱心になりなさい。
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29日 |
144句 |
信により また 戒と精進により また 禅思と 法の決断により 智と行をかね こころにつつしみあり かかるひと この世の大なる くるしみに打ちかたん
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自ら信ずること堅固、道徳を遵守し励み心静寂にし総てを正義により判断する。これらにより理智と行為を兼備して正しい思念を確保すれば人生の大いなる苦難の勝利者となれる。
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30日 |
145句 |
疎水師は げに 水をみちびき 箭匠は 箭をためなおし 木工は 木を曲げととのう 智あるひとも また おのれをととのうなり
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疎水師は水を導き、箭匠は矢をととのえ、木師は木をととのえる。智ある人間は自己をととのえる。
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31日 |
第十一品
146句 |
この世はつねに 無常に支配される 何の笑い 何の歓喜ぞ おん身らはいま 暗黒に覆われたり 何故に 燈明を求めざる
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この世に存在するものは総て焼かれつつある 一体、これを誰が笑い得ようか、どこに喜びなんてあるのか。みんな暗黒に取り囲まれておりながらどうして燈明を求めないのか。
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