小沢一郎と日本共産党―「悪魔の密約」 

これは中西輝政・京都大学教授の200711月の論文である。今回の選挙情勢を適確に予言しているので、

ここに全文を連載し、心ある多くの日本人に衆知せしめたい。日本は大変な事態に突入してしまった。
 平成2111月 徳永圀典

1日 小沢一郎にとどめを打たねば日本が危ない 小沢一郎氏は、いま真剣をぶらさげた「最後の大勝負」に打って出ている。小沢民主党に対する自民党は、そのことをしっかりと肝に銘じなければならない。 重要なのは小沢民主党の戦略が何を「柱」にして成り立っているのかということを見極め対処することである。
2日 小沢の覚悟 第一に「今度だけは絶対にミスをしないこと」を肝に銘じて「必ず決着をつける」覚悟で小沢氏は仕掛けていることを常に忘れないことだ。

民主党はそれ程慎重に構えて出てくるのであるから迂闊な「話し合い」路線で取り込もうなどと考えるのは大間違いだと考えねばならない。

3日 ポピュリズムの異常 「年金」と参院選の追い風で世間には自民党批判、小沢民主党への期待があり、このようなポピュリズムが異常に高まった時には、この状態が数ヶ月、長ければ半年は続くと見なければならない。 そのような風圧の中では、自民党は真に「肉を切らせて骨を断つ」覚悟で挑まなければ小沢氏からの攻撃を回避することはできまい。
4日

自民党の覚悟の欠如

つまりテロ特措法で言えば、海自の補給活動は最早や「何ヶ月も中断してもよい」というぐらいの腹をくくらなければならない。 そして「テロ特措法を断絶させたのは民主党である」ということを、アメリカにも世論にもこれ以上ないくらいはっきりと示すべきであろう。
5日 アメリカの無原則を突け 日米関係には波乱が起きるだろうが、それでよい。安倍総理が終始、最も煩悶したのはアメリカが突如、北朝鮮に接近して拉致問題、核問題という明白な北のテロ・大量破壊兵器問題に対してあれほどの無原則さ で動いたからである。そしてアメリカは北朝鮮のテロ支援国家指定を解除するという。一方のテロを野放しにして、一方のテロは押さえる為には協力しろというバカな話はない。
6日 小沢の止めを刺す方法はあった 小沢一郎氏がいまアメリカに対して主張していることは、一方のテロに就いてだけであるので片手落ちではあるかせ、半分は日本の国益にかなっているともいえる。従って、自民党は小沢氏に言うだけ言わせればよい。 そして新法を衆院で再可決するという中途半端な手法ではなく、何ヶ月も給油活動を敢えて停止させ小沢民主党の「暴走」を有権者とアメリカに印象づけ総選挙で勝ってその余勢で法律を通すべきなのである。そうして小沢一郎氏にとどめを刺さなければならない。
7日 鉄砲を撃たない戦争の覚悟 第二に、小沢一郎氏は必ず、自民党の中手を突っ込んで撹乱してくるであろう。不信任決議は安倍総理に対しては成り立つ戦略であったが、新内閣にこれは通用しない。となれば先ずは「政治とカネ」の問題をついてくるのか、他の何かなのか。 これに対抗するために情報管理を徹底しなければならない。
安倍内閣の轍を踏ませようと小沢民主党とメデイアは必ず動いてくる。文字どおり鉄砲を撃たない「戦争」であると認識すべきであろう。
小沢一郎と共産党の連携 小沢一郎と共産党の連携 小沢一郎と共産党の連携
8日 決定的なこと そして、ここで決定的なことを言っておこう。安倍総理が辞任を決めざるを得なかった最大の要因だと私が考えるのは、実は九月八日に行われた日本共産党の中央委員会総会での決定的事項である。 日本共産党は次ぎの総選挙において、全ての小選挙区に必ず一人擁立していた候補を次回総選挙から大幅に絞り込むことを決めた。
9日 自動的に政権交代は必至であった これは安倍総理にとっては将に決定的なニュースだったと思われる。つまり各小選挙区における共産党の平均一万票前後が、殆どすべて民主党に流れるということを意味するからである。 それによって、例え「風」が吹かない全くの無風状態でも、数十の選挙区で自民の議席が確実に民主の議席となる。つまり参院選の結果や安倍辞任など何の関係もなく、次の総選挙ではほぼ自動的に政権交代が起こる仕組みが動き出したのである。
10日 国民の平和呆け、自民党の無神経 多くの人が見逃しているが、日本の政治の片隅で起こったこの出来事は自民党の参院選惨敗や安倍退陣、テロ特措法の延長問題などよりも遥かに大きな意味を持つと云う事を国民は知らな ければならない。
つまり、安倍内閣のこれまでの動きとは何の関係もなく、次の選挙ではほぼ十中八九、政権交替となる見通しが出てきたのである。
11日 共産党と手を結んだ小沢民主党 それにしても、この共産党の決定が、なぜこのタイミングで行われたのか。小沢民主党代表が政権奪取になぜあれほどの自信と戦略を持ち、参院選で劇的に勝利したか。 それは、小沢一郎氏が日本共産党と手を結んだからである。2007年4月の沖縄県知事選で、小沢一郎氏がはっきりと共産党と手を結んだことは記憶に新しい。
労組人脈と代々木(共産党)の関係 労組人脈と代々木(共産党)の関係 労組人脈と代々木(共産党)の関係
12日 小沢一郎・横地孝弘の蜜月 小沢一郎は2003年に民主党と合流するが、それ以来今日に至るまで一貫して小沢一郎・横地孝弘の蜜月が続いており、誰もが首をかしげてきた。
だが、それもそのはずで、小沢氏の民主党内における一番の支配基盤であり、
終始小沢氏と近い距離にいるのは旧社会党出身の議員グループなのである。そして横地孝弘氏や赤松広隆氏らインテリ系議員の旧社会党時代、または労組関係からの人脈は「代々木」つまり日本共産党につながっている。
13日 潜伏共産勢力との連繋がある民主党

我々が民主党、あるいは旧社会党と思っていた議員の人脈系譜は、遡れば大正時代の無産政党や戦後の旧社会党左派と云われた所に発しているが、それらは戦前と同じ構造で「社民勢力への浸透」を一貫して唱えてきたコミンテルンの人脈とつながっているのである。

コミンテルンは社民勢力の中に潜入して、そこに「潜伏共産勢力」を作り水面下の人脈を広げ内側から全面的に支配せよ、という指令を出していた。「社会ファシズム論」と云われた1928年のコミンテルン第六回大会での宣言以来、共産主義の対社民勢力への一貫した浸透戦略があったからである。
14日 コミンテルン人脈と小沢一郎は悪魔の提携をした 日本でもこれが徹底され、山口二矢に刺殺された浅沼稲次郎社会党委員長まで、コミンテルン人脈とのつながりは延々と続くことになる。当然、その後もずっと継承されてきた。 戦後、旧総評がはじめは反共労働団体として誕生したにも拘らず、段々左に寄ってやがてピンクから赤色へ変わっていったというのと、恐らく同じ構造だと思われる。
15日 民主党・小沢一郎は共産党と連繋 兎も角、我々は社会党なら共産党とつながっているかも知れないが、然し、民主党は共産党と全く別の政党だと思いがちだ。 然し、民主党の中に旧社会党のインテリ系が合流したことは何を意味するのか。この旧社会党の人間がパイプ役となり小沢一郎氏は共産党と非常にスムーズに合意ができ、それ故にこそ深い信頼関係を保っていると考えられる。
16日

共産党と社保庁労組

年金問題についても同様で「will」(8月号、9月号)に屋山太郎氏が二号にわたって書かれたように、社保庁労組の中の国費評議会が大きく絡んでいる。三年前の「年金未納三兄弟」などと揶揄された事件からはっきりしているのは、 社保庁労組の中に共産党フラグというものがあり、それが連合につながる部分にも非常に大きな影響力を持っているということである。年金問題の本当の帰趨を握っているのは、今も共産党につながる勢力なのである。
17日 国民に賄賂を握らせた民主党 そもそも、年金問題を政治のテーマにすることは「我が政党に票を入れれば年金をこれだけ給付します」と有権者に賄賂を握らせ国民を買収するようなものである。このよううな手法は民主主義の「最大の恥辱」に 触れる極めて危険な行為だと言える。実際にその手法を最大限に駆使し民主主義を崩壊させたのがヒットラーであった。1920年代、大量の失業者を抱えるドイツでは国民への給付問題が大テーマとなっていた。
18日 民主党はナチスと同じ ヒトラー率いるナチス党は、この情況を利用して政権を取れば年金支給額や失業保険額を大幅に増やすと訴えたのである。これを大衆は熱狂的に支持した。 ナチス党は年金問題が争点となった1930年の総選挙で107議席を獲得し一躍国家的な大政党にのし上がった。これがドイツの民主主義を崩壊させる上で決定的な役割を果たした。
19日 年金問題は反体制派の常套手段 ヨーロッパでは、この反省から、年金を政治の大テーマには決してしない。年金制度の大改革を行う時は与野党の協議体を作るなとせ、必ず超党派体制を作って取り組んでいる。 「年金」を敢えて政争のテーマにするのは「反・民主主義の価値観を持って体制転換を狙う勢力」なのである。
20日 真っ当な市民社会政党ではない民主党 以前から、日本共産党は、民主党の内部で社民党と同じような考えを持っている勢力、近年では主に医者や女性団体出身者、NGО出身者などの民主党の一番真ん中を占めている若い勢力 の一人ひとりをオルグしているという噂が一貫してある。もしそうなら民主党という政党は、民主主義国家の二大政党の一角を占めるような真っ当な市民社会政党ではないということになる。
21日 民主党の暗部 階級闘争理念を持っていたり、反体制運動に携わってきた人たちがその思想や人脈を温存したまま党内に潜伏していることになるからである。

目に見えない水面下でどんどん勢力を広げている可能性すらある。そういう部分を民主党は持っており何よりもこれが「民主党の暗部」なのである。 

22日 民主党の不透明さ 「自民党の暗部」がかって言われたように暴力団とのつながりや土建業界とのつながりという「腐敗の構造」だとすれば、民主党の暗部は単なる腐敗問題ではない。この国の現体制の帰趨に直接関わる重大問題だと言える。 つまり小沢民主党は、アメリカの民主党やイギリスの労働党、ドイツの社民党のような自由主義価値観を大前提に市民社会的価値観に完全に立脚した政党では、まだ無いのである。
23日 小沢一郎は左翼反日と連繋がある

勿論、前原氏のような「党内保守派」に分類される議員もいるし、自民党出身の岡田氏や鳩山氏もいる。然し、実は彼らはどこまで行っても少数派でしかない。

水面下で広がっている勢力は左派市民運動などの議会外活動をして力を温存しており、小沢一郎は、まさにそこと繋がってしまっているのである。 

24日 共産主義の闇勢力とつながった小沢一郎 かっての小沢一郎氏は金丸金脈や土建業界などと水面下でのつながりを持っていたが、今は、もう一つの「戦後日本の闇勢力」つまり、社保庁労組の例で見られ るように日本の自由を危機的状況に陥れる共産主義の闇勢力とつながっているのである。だからこそ年金問題の大仕掛けも「政治とカネ」のあれほど徹底した追及もできたのである。 
25日 地域労組の幹部と密接な小沢一郎

参院選の一人区で民主党が大勝利をしたのは農家ら対する「戸別所得補償」という政策が効いたと言われるが実は票数を見ると、問題の一人区で言えば、自民党の得票と民主党のそれとは本当に僅差であり農家層

の票が全部動いていたとは考え難い。ではなぜ大勝利したのか。これは小沢一郎の過去一年の動きを見ればよくわかるが、一人区の地方を回った時に各地の地域労働組合の幹部と密接に会談したことによる。
26日 自治労と日教組 「地域労働組合」とは、繊維労連や鉄鋼労連などのような大企業に根ざす本来の労組ではなく、共産色が色濃く入っている自治労と日教組である。 今や、この二つこそ、地方の選挙で有力な手足を提供するほとんど唯一の勢力だからである。 
小沢の35億円錬金術 小沢の35億円錬金術 小沢の35億円錬金術
27日 小沢は左翼メデイアに取り込まれた また朝日新聞を中心とする左派メデイアがなぜ小沢批判を一切、やらないのか。いま小沢氏を動かしているのが実は「自分たちの勢力」だ、つまり左翼が「小沢氏を取り込んでいるんだ」という自信があるからであろう。 今回の参院選では「政治とカネ」があれだけ問題になったにもかかわらず、小沢氏が政党助成金を含め35億円ものカネを生む錬金術で私腹を肥やしたことについては「週刊文春」以外、一切報道しなかった。
28日 大メデイアと共産党 これは日本の大メデイアのかってない偏向報道であり、メデイア自身が進んで民主主義を正面から踏みにじっていると言わざるを得ない。 このような状況を生んだのも、代々木人脈(共産党)が日本のメデイアの中にも相当深く根を張っているからであろう。 
29日 民主党保守派を抱き込み政界再編を 小沢民主党が日本共産党と手を結んだ以上、総選挙は自民党にとって誠に厳しい情況になるであろう。これを打破するにはもはや、緊急に政界再編につながる動きを作り出すしかない。 つまり民主党内の自由主義を価値観として明確に持っている半分の陣営に党を割らせ、それを組み込んでもう一度、健全な自由主義陣営が多数取れる状況を作るしかないのである。
30日 日米安保はまさに「現代日本のマジノ線」

ある意味で現在、日本は1930年代の「フランス人民戦線」のようなところまで来ている。アンドレー・モロアが「フランス敗れたり」でフランスが第二次世界大戦でナチスドイツに征服された原因を突き詰めているが、この本は本当に今の日本の運命をよく示している。国民はポピュリズムに煽られて国がどこに向っているのか全く考えず、民主主義ゆえに選挙の結果によって政権は転々と代わる。国の立て直しを真剣に考えている政治家が次々とスキャンダルで失脚してゆく。学者、評論家、財界人、軍人にいたるまで殆どがナチ

スドイツのカネを貰って買収されており、思想的に腐敗していた。これが戦争になった瞬間にフランスが内側から崩壊した最大の原因であった。そして崩壊前のフランスに広く行き渡っていた絶対平和主義という要因もあった。第一次世界大戦のような悲惨な戦争は二度とせず平和に徹するのだ、、としてヒトラーに対しても言いたいことを言わず宥和政策に徹した。一方、膨張するドイツの脅威に対しては「マジノ戦があるから大丈夫だ」と脅威を直視しなかった。これを現在の日本に置き換えれば、日米安保はまさに「現代日本のマジノ線」だといえる。
31日 耳障りの良い言葉で左翼民主党は保守にウイングを拡大 フランスが崩壊する四年前が、まさにフランス人民戦線が政権を奪取した年で、耳障りの良い言葉で中道、場合によっては保守を装いながら、どんどん左右にウイングを広げて政権を奪取した。 この人民戦線がフランス人を根底から立てなくしたのである。
まさに、現在の日本に照射される問題であろう。