10月10日 文明の余病

 文明は深く省察すればする程、その中に大きな不覚、錯誤のあることがわかりますが、そういうことを覆い隠して、とにかく文明の華やかな発展は、日に日に人間の魂を魅してゆきます。山野も次第に容を改め、田園林野はどんどん新市街に編入され、そこでは道路は固く舗装され、高層建築は林立し、美しく快適な乗物は街路を疾走し、官能を刺激する美味美音等あらゆる享楽主義の前に、もはや宗教的敬虔さ道徳の抑制は段々省みられなくなって、市人は只もうその享楽と、の為の金銭と、それを得る為の仕事に遂はれて余念がありません。         日本の父母