10月11日 陋ではない田舎

 近代文明においては、あるものはただ都人と田舎だ。この区別だけだと、そこだ、今まさにそうなっておる。この中にあって、田舎がなんで(ろう)か。田舎の方が質が文に勝っておっても、質は質だ。教えればいい。この何陋(なにろう)精神が盛んになって優れた人々、進んでは達人に至るまでが、農村に多くなるとき、その国は永遠に繁栄する。そうして、その力に依って都会もその過ちを少なくし、健全に発達して農村の根幹より開く葉となり花となり実となる。即ち都市を都市たらしめる。この何陋精神は大いに振興したいものである。

               陽明学十講