10月16日 内省と共に生きる

 生きんとする意思は言うまでもなく人生の原動力である。然しながらただ生きようとするだけではまだ動物的境界に過ぎない。人格に於いて初めて如何に生くべきかの内面的要求を生ずる。ここに人のみ許された至尊なる価値の世界-法則の世界-自由の世界があるのである。ただ生きようとする意志はやがて自己保存種族維持の努力となって現れ、長生を願い、限りなき不死を望む。然るに一度「如何に生くべきか」の内面的要求に基づいてくると、この自己を保存し種族を維持しようとする努力に新たな自覚を生ずる。時間を超越して永遠の今に安立しようとするものである。  

              士学論講