安岡正篤の言葉 平成29年10月2日 徳永圀典選
男子吟
一男子と作らんと欲すれば、すべからく四般の事を了すべし。財・よく人をして貧らしむ。色・よく人をして嗜ましむ、名・よく人をして矜らしむ。勢・よく人をして倚らしむ。四患既に都て去る。豈に塵埃の裡に在らんや。 邵康節
康節は宋初の有名な哲人。程子兄弟、司馬光らの畏兄である。嫉妬は女へんに限らぬ。男へんの疾や石の字もあってもよいのである。否、その方が大問題である。一人の男らしい男になろうと思えば、是非次の四通りのことをかたづけねばならぬ。
1.-財利は人に欲しいだけ儲けさせ、2-女色は人の好きなようにさせて置き、3-名誉は人が自慢するにままに任せ、4-勢力は人に勝手にさせて置く。人々を悩ますこの四つの患いを自分から去ってしまえば、俗に伍する人間ではない。 百朝集
国を制するものは
凡そ、国を制し、軍を治むるには、必ず之に教ふるに礼を以てし、之を励ますに義を以てして、耻あらしむるなり。夫れ人・恥存する時は、大に在りては戦ふに足り、小に在りては守るに足る。 呉子
「恥を知る」が根底
凡そ国に秩序をたて、目鼻をつけ、国を治めて行く、軍を治めて行くには、美しい秩序・調和の事である礼を以てする。政治でも軍政でも同じ事。次に義、つまり道義というものを奨励しなければならない。どうも利をもって励ますのは駄目である。
さらに、人間に恥を知らしめる。これが一番大切な事で、恥を知らなくなったら、人間はどうなってしまうか分からない。現代の一つの深刻な問題もここにあると思う。ロシアにソロビヨフという哲学者がおるが、人間の倫理道徳の根底を恥を知ることに置いておる。こういうところにも今後の政治の秘訣があると思う。
醒睡記