坐相 その二
最近の連中は、実にだらしない、行儀が悪い、男女を問わずだがね。
乗物に乗っている連中を見ていると、足を、あっちへやりこっちへやり、始終動かしている。酷い奴は、ドタ靴を頭より高い所へ置き、それこそ、のべつ幕無しに、もぞもぞと体を動かしておる。
こういう人間は賎人に相当する。名士であろうが、重役であろうが、人間そのものが卑しく屑である。
「肩は円く」と申したが、肩は円くなければいけない。怒っている肩は、空威張り、痩せ我慢の相じゃ。
着物を着て羽織がずり落ちそうなのもいけない。これは美人に多いが、所謂、薄命の相の一つである。
でぶでぶ肥えた肩はよくない、痩せておっても、線がなだらかで、どこかふっくらしておれば好いのじゃ。
角ばったり、でこぼこしておるのは好くない。
これは実は「声」などでも同じことなのだ。
円くて平らかで厚みのある声はよいが、金切り声とか、きいきい声だとか、しわがれ声はいけない。第一聞いていて不快だ。厚重なのが好いのだ。
心して動作することじや。見られているのじゃ。
岫雲斎