10月23日 病床の智恵

 人間はやはり窮してみると、浮き浮き暮らしておっては分からない深味を味わうことが出来るのであります。殊に病床に臥して天井を見ながら考え込んだり、忘れておった書物をひっぱりだしてはしみじみと読んでみたり、或いは平生忘れておったことなど色々と頭に浮かんでくるのであります。また寝床の中でとつおいつ考えると言うのは、案外良い智恵も出るもの。むしろ痛くも痒くもない病気は大いにせざるべからずで、これは喜ぶべき天与の恩恵であります。随所に主と作れば立処皆真であります。  論語・老子・禅