持ちもの・借りもの 

「まだ、気づいていなさらぬようじゃな」

「はて、何を気づかぬと申すのじゃ」

「ご自分の持ちものと、天からの借りものの区別を御存じない」

「はて、妙なことを言い出したぞ、何が我がもので、何が借りものだと申すのじゃ」

「されば、人間は、この(からだ)というものと、その中身の心とで出来ております」

「躰と心の二つでのう・・・・?

「はい・・・そのうち、自分のものは心だけ・・・躰は根っからの借りもの、(こわ)れものにござりまする。心は自分のものゆえ、鍛え方さえよければ、何百年、何千年と生き継ぎます。釈尊のように、大神宮さまのように・・・然し、躰はそうは参らぬので、使い方次第では十年でも壊れます」

「フーム・成る程の・、躰は借りもの、壊れものか」

「はい。それゆえ、壊れた場合は、さっさと貸したお方が引揚げますので、わが心のままにはなりませぬ」

「そうか、心は自分のものでも、躰は天からの借りものか・・・」

「心はこの自分のものゆえ、躰が見えなくなりましても、じっと貴方のご身辺を見守りまするのじゃ・・」
             平成19年10月7日

          徳永日本学研究所 代表 徳永圀典