混迷の奥に見えるもの 平成10年10月1日 日本海新聞潮流に寄稿

@種を蒔き施肥して太陽と雨を待つ。旱魃や台風を恐れ豊作をひたすら祈り待つ。定住し て危機にも何とかなるとひたすら待つのみ。結果は仕方がないと諦める。工業との比較 だが農業は他人の成功例を容易に模倣出来る。だから他人が気にかかり人のふり見て皆 で渡る農耕民族。最悪への対策をしない。
近年、大蔵とか銀行、自民党を短絡的に悪者に仕立て上げる習性はここから発する。こ れは農耕民族の根源的性向。天候依存であり傑出したリーダーは不要。

A大陸の遊牧と砂漠の民は定住し待っていては食えない。獲物を追い求め動き回る、侵略 する、掠奪する。勝れたリーダーと強引な手法が育つ狩猟民族。最悪への対策と予見を 常とする。危機には何とかするし目には目で報復する。これはアングロサクソンの特質。

Bさて日本人は黙々と農耕してきた。これは製造業に適し超一流の製品国家の素質と云え る。動き回る狩猟民族アングロはマネーの世界に最適。世界のマネー界は侵略的で非情 で猛々しく狡猾で掠奪的だ。強引で個性と独創性を発揮する気質は先天的だ。彼等は自 己を強硬に主張し説得する。恫喝的で戦略的で外交能力に長ける。農耕型は黙々と調和 に心がけ人のふりを見る。戦略性に欠ける。日和見だが皆が渡れば恐くないとある段階 で突然走りだす。水は沸騰直前迄表面は静かだが臨界点に達すると一気に泡立つ。これをシンギュラーポ イントと言う。日本人が突然一気に怒涛の如く変化してしまうのがそれで単一的農耕島 国民族の特質。


C世界のマネー界は米国のワスプと言われるエリート階級が支配している。ホワイト、ア ングロサクソン、プロテスタントの事。金融に長けるユダヤ人と共に。彼等は世界中に 自分の価値観を押しつけ、韓国、インドネシアそして日本でも企業を破綻させ格安で手 に入れた。日本人は右肩上がりの株高しか利益を上げる手段を知らぬが如し。彼らは隙 あらば売りを仕掛け情報を操作し莫大な利益をあげる。外資系の投資信託はこうして高 い配当をする。 こんな市場経済が果たして人類の利益に適うのか疑問に思う。ごく一部の欧米資本家が 投機で莫大な利益を手に入れる。狡猾極まりない。その手中に落ちたのが金満日本だ。上述の農耕と狩猟民族の相違を見れば必然的帰結だ。

Dそして彼等は日本を異質と言う。おかしい。日本国民は反論しない。二千年の文化を持 つという自覚と誇りを持てと言いたい。彼等の文化を押しつけられている。アングロサ クソンの文化が最高とは言えぬ。米国は銃の保有を許す反文明の野蛮国ではないか。 

E現今日本の混迷は経済的成功に比例した政治の統治能力欠如に起因する。成功に見合う 国際的仕組みが日本にない。文化の問題ではない。寧ろ日本としての自負を失った教育 と政治の貧困に帰する。欧米諸国と日本の制度にギャップがあり過ぎるのだ。 
   

Fその最大のものは政治家の資質の貧困であろう。彼らの資質の変革こそ国家的急務だ。 民間は最終的に必ず責任の詰め腹を切らされ倒産する。政治家は政治の責任を果たして いない。与野党の次元の問題ではない。これは国民資質の反映かも知れぬ。国益を主張 し戦うアングロ型が国際政治には必要だ。大臣も堺屋氏のようなプロの有能な方がやれ ばいいものが出てくる。国民のために戦う政治家を出さねばならぬ。飾り物大臣は終焉 としたい。一人の有能指導者だけでも國の運営は難しい。

Gマスメディアは常に目先の現象のみを追いかけ本質的でない。彼等に振り回されぬ事だ 。

H国家でも個人でも不易の核心が確立していれば心配ない。戦後の日本人は不易の部分を 消失した。今こそ日本人としてのアイデンティティを取り戻さなくてはならぬ。 


Iシンギュラーポイントの話をしたが現今日本には極めて危険な兆候すら窺える。ソフト な顔の内外の危険思想はチャンス到来と思っているであろう。危険な臨界点にいる日本 。今こそ不易に目覚めなくてはならぬ。さもなくばあらぬ方向に日本は突き進む恐れな しとしない

                   鳥取木鶏クラブ 代表 徳永圀典