109日 経済オンリー社会

 今日ほど経済という問題が人間生活を支配した時代はかってなかったであろう。いかなる人も、食うとか、食えるとか、食えぬとすいうことを苦にしている。食うことに心配ない人々も、絶えず経済を心配している。政治も経済問題、財政問題が主である。学問も経済学、歴史も唯物史観が圧倒的に流行し、世の中の変化も究竟(きゅうきょう)、物質的生産力の変化、経済機構の問題に帰せられる。まことに経済主義、経済至上主義の時代である。こういう集団的、機械的、動物的、非精神的な時代に、これとは逆な人間の精神、個々の人の霊魂の問題である宗教が閑却(かんきゃく)され、詩が生まれないのは当然である。           漢詩読本