111日 日本農士学校安岡学監送別の辞 上

 諸君、期満ちて今将にこの学園を去らんとす。古城の春色又新にして秩父の山、(つき)(かわ)の流れ、低回(ていかい)去る能はざるものあらむ、世の学校に学ぶ者多し、然れども諸君は彼等と大いに趣きを異にせり。彼らの多くは立身出世の為に学校を択びて入る、知識を弘め技術を盗むと雖も以て人を排し己を遂げその(たくま)しき者は功を立て名を誇り其の劣れる者は終身犬馬(けんば)(あい)()幾何(いくばく)もなし。