1111日 死とは何ぞや

 死とは何ぞや。これほど人間に真剣な問題はない。その一結論として、「未だ生を知らず、(なん)ぞ死を知らん」という孔子の()()に対する答に私はおのづから(えり)(ただ)すものである。そうして「死とは何ぞや」の問題を「いかに死すべきか」の行動をもつて解決した古人、特に我々の祖先に無限の敬意を覚える。西洋の詩人・哲学者などが詳しく日本人の死の研究を行ったならば、彼らは、いかに驚嘆することであろう。武士道に限らず、およそ日本の国体・歴史・一切の文化は「死の覚悟」の上に成立っていると言っても過言ではない。

                東洋の心