11月2日 日本農士学校安岡学監送別の辞 下

 諸君の(きた)るや(はじめ)より所謂立身出世の為に非ず。修身(しゅうしん)斉家(せいか)に出で(ひそか)()(ごう)護国(ごこく)を期す。之を以て遂ぐべき(おのれ)無く排すべき人なし、学は安心立命(あんじんりつめい)の為にし、開物(かいぶつ)(せい)()の為にす、造化(ぞうか)に参じ(どう)(みょう)を楽しむ、実に先哲の()()なり、(うつわ)の大小、才の()(どん)は敢えて憂ふるに非ず、唯身の(おさま)らず、世の(やす)んぜざるを是れ愁う、()の心を尽くせば大地一(だいちいち)不朽(ふきゅう)なり、願はくばこれより世間有名無名の人に伍して()た惑ふることなかれ、・・・諸君それ(けん)(しょう)なれ。     師父列伝