男性の嫉妬心
女偏に疾
この言葉は痛い切実なものであります。ねたむと言う字は、女偏に石、即ち「妬」と書きますが、また女偏に疾=「嫉」と書いてやはり同じ意味に使います。
この二字を合わせて嫉妬でありますが、これは世の女性からは酷い文字だと言って苦情の出る字で、つまり男にも嫉妬心があるではないかというわけであります。
男性の嫉妬心
特に人間の欲望の中で一番強いのは、権力支配の欲望であります。然し、権力支配の欲望となりますと、女性よりむしろ男性が主でありますから、その意味では嫉妬心は男性の方が強いかも知れません。過去を調べてみても、男性の嫉妬によって事が破れて悲劇を起こした例が多数あります。
過去の歴史ばかりではありません。現に地球上で毎日といってよい程同じ悲劇が繰返されているのであります。
この言葉は淡窓先生にとっても、恐らく体験から滲みでた言葉であろうと思われます。その証拠に先生は、日田の地を出て後は時の大名などの権力者に結びつくようなことは一切しておりません。先生の偉大な所以の一つであります。
安岡正篤先生の言葉