1130日 佳い人、佳い書

 佳い食べ物も宜しい、佳い酒も宜しい、佳いものは何でも佳いが、結局、佳い人と佳い書と佳い山水との三つであります。然し、佳い人には案外逢えません。佳い山水もなかなか会えません。ただ、佳い書物だけは、いつでも手に取れます。不幸にして佳い人に逢わず、佳山佳(かさんか)(すい)に会わずとも佳書(かしょ)にだけは会いたいものである。佳書によって私たちはしみじみと自分自身に話すことができる。天地が壊れる時も、ああ天地が壊れると語れるのであります。これが天地の外に立つということであります。    人生の五計