119日 真の隠居を

 人生は悪夢のごとく疲れやすい。世に時めく人々ほど実は荒びがちである。人間せめて老来多少とも閑を楽しみ、真に生きねばならぬ。隠居とは即ち現在の苦役を去って閑地に生きることでなくてはならぬ。何にも「老いぼれる」ことではない。実はかくして事業を大局から観察指導することも出来る。その意味から言って、隠居に語弊を覚えるならば、「大御所」と尊称してよい。老成大人は宜しくその関係する事業や地位にどしどし後進の人材を鑑識登用して自に大御所たるべきである。     経世瑣言