本質を知るA平成十一年五月二日付日本海新聞潮流に寄稿

将軍とは石原莞爾将軍の事とは前回明らかにした。将軍の悠揚迫らざる威容、正々堂々として自ら戦犯なりと言明、捨身で危地に突入してくる信念の強固さ、勇猛無比の豪快なる態度、真実さは、裁く人、裁かれる人、敵味方、民族の別を越えて人の真心ををうち思わず襟を正さずにはおかなかった。と著者は続ける。

朝日新聞記者が感動して転ぶように石原のもとに走りより涙をいっぱいたたえて〔東京裁判以来、今までの指導者だった人たちが戦犯として裁かれていますが、その態度の卑屈さには胸の潰れるような恥ずかしい思いをしてきました。この二日間、将軍の言動を見て私は日本人として、初めて晴れ晴れとしました。こんな嬉しい事はありません〕と感動した。


これは日本人のみではなかった。UP、APの記者が将軍のご意見を拝聴したいといってきた。外国新聞記者も判検事も日本にきて、日本人は権力者に対しては心にも無いお世辞をつかって嘘をいうがこのジェネラルだけは全くウソなしで底知れぬ大人物だと言って好意を抱いていた。

外人記者が質問する。トルーマン大統領をどお思うかと。石原将軍〔トルーマンは政治家の落第生だ〕どおしてか。将軍〔政治家と自称する以上、目先が利かなくてはならない。明日、明後日を洞察してテキパキ手を打つのが政治家というものだろう。

・・中略・・早い話が戦争の土壇場になって、させなくてもよいのにソ連に参戦させて鳶に油揚げをさらわれた図など
世界史的な大笑話となって恐らく後世に残るであろう。おかげでアジア諸国こそいい迷惑だ・・ルーズベルトにしても似たりよったりだ。・・B29はドイツも完全に破壊した、全世界至る所で民族的国家的なトラブルを起こしている。こんな目先のきかない政治家は見たことがない。政略方面は落第生だ〕 。
記者連はジェネラルの言う通りと言い大笑いした。また、〔ジェネラルはマッカーサー軍政は大失敗であると言うが如何なる点でしようかと問う。

石原将軍曰く〔その第一は敗戦国の精神を侮辱していることである。・・腕力の強い奴が腕力の弱い者より精神がすぐれているなどと言う理屈はない。
日本には日本のすぐれた精神がある。マッカーサーは敗戦国の精神を侮辱し民主主義を強要しているではないか。勝った国が負けた国を奴隷扱いするということは大きい誤りである。
・・プロシアの宰相ビスマルクは参謀総長のモロトケ将軍にフランスに最敬礼を要求しようとした。モロトケは〔勝者は敗者の身になって考えてやるべきで思いやりが大切であります。降伏した上に更に最敬礼を要求して敗者に侮辱を与える事は道をわきまえたもののする事ではありません〕と建言した。
・・近年聞く処によると国民は寒さに飢えている、死人も出ている。列車では子供が押し潰されているのに進駐軍だけがガラ空きの汽車だ。

どおだ、これが君の言う民主主義なんだ。日本軍が占領地でとった態度もこれほど酷いものではなかった。・・満州は結果的に遂に軍人と官僚とによって誤られ、今日侵略者としてレッテルを貼られている。失敗の原因は中国人の嫌う中国の好漢を使ったことである。彼らは軍を背景にして私利私欲をはかった。中国から見れば全く笑止の沙汰である。日本に対する不信軽侮の原因もここにあった。マッカーサーのやっている事も日本軍の失政と寸分変わらない。・・と滔々と批判し声を大にして、石原が言っているとマッカーサーに伝えるがよろしい。記者たちは石原の思い切った発言に驚嘆していた。


長々と引用した。読者諸氏はいかが思われましようか。私は感動を覚えた。軍事のみならず文化、歴史、広く世界史に通じその胆識は言語に絶するものがある。指摘の如く私利私欲の国家官僚が敗戦の原因を作った。今回の日本存亡の危機も日本海新聞吉岡社長指摘の如く同様だ。歴史の本質を見抜く要のある政治家、官僚は以て師表とすべきであろう。近年の亡国的様相に呆れ果てて本文を敢えて投稿した。
                   鳥取木鶏クラブ 代表 徳永圀典