徳永圀典の書き下し「日本国体論」その六  「国体論索引表」

平成20年12月度

 1日 日本の自然環境

日本は地球の東端の弧状列島である。アメリカの二十五分の一、中国の二十七分の一、ソ連の六十分の一。
日本は山岳が多く平野は国土面積の十四l。

英国の二十四、ドイツ三十五、フランスの四十一、ルーマニアの四十三、イタリアの53、ハンガリーの六十二パーセントと比較して日本の平野は少ない。

 2日 著しい特徴 山岳の多い日本の地形は文化と歴史に大きい影響を及ぼした。島国根性と言われる封鎖的、排他的な資質と、表裏をなす模倣性、開放性は矛盾しているが、これは四海を海に囲まれているところから生まれて いる。
海岸線が屈曲に富み良港が随所にあり海上交通が至便である。これが国家の成立、版図の拡大に重要な貢献をしたことは古代史上著しい特徴である。
 3日 四季の変化

我が国は、大陸の気候に支配される、その上太平洋と日本海に分かれておる。また中央を縦走する山脈の影響も深く、気候は地域的に変化に富んだも

のとなっている。ために、四季の変化が鮮やかで、均分的で、生物の発育に寄与しており、自然と人文とを豊かにし国民性形成の大きな要因となっている。
 4日 台風

夏から秋にかけてしばしは台風が訪れる。南洋に発生してフィリピン、台湾、日本を襲う。それが農作物や家屋などに大きな被害を与える。特に開花結実期の稲のを襲う台風は、

農民の命取りで、自然のもたらす脅威を逃れ様として古来幾多の呪術的祈祷宗教が蔓延し、それが政治と道徳の上に極めて重要な分野を占めてきた。
 5日 海流

日本列島の周囲を洗う海流には暖流と寒流がある。両者が複雑に錯綜している。黒潮という暖流は世界二大暖流の一つでそのおかげで太平洋岸は気温は高く、南方民族との交流をもたらした。

寒流は、三陸沖から犬房岬に至り暖流と合してその下を潜流し大漁場をもたらしている。日本海は対馬からの暖流とリマン寒流の合流れもあり大陸との通航に寄与したことは歴史が語っている。
 6日 伝統 日本は四方海に囲まれ、海が強靭で無類の城壁の役割を果してきた、故に他民族の侵略を受けることがなかった。それは他民族の文化的刺激の少ないことを意味する。元寇を除けば他民族を警戒することは皆無であった。 その上に、気候風土に恵まれ、言語習慣風俗を一にする単一民族的であるから他国のような対立抗争、謀略、欺瞞、残虐、復讐、裏切り、搾取、奴隷など深刻なものはなかった。日本人は純粋無垢は長所であり短所でもある。
 7日

世界無比の文化国家

日本人が、これまでなんら警戒することなく、千数百年の間、儒教と仏教を摂取し、消化吸収して日本独自のものとしてきたのである。否、本家本元以上の、「至誠」という純粋なものを確立している。 それは中国を越える思想である。また、キリスト教と西洋ヒューマニズム文化を迎え入れている。日本は世界五代文化を悉く学び日本を世界無比なる文化国家たらしめているのである。
 8日 日本の不思議

西欧諸国は、固有のヒューマニズムとキリスト教の二つのみ。西アジア・中央アジアはマホメット教、インドはヒンズー教とイスラム教、中国は共産主義。

独り日本だけが、固有の神道の他、キリスト教、仏教、儒教の四つを合わせ五大文化を成り立たせているのである。 

 9日 欧米諸国

西洋諸国は二千年の歴史を有しながら、今尚キリスト教とヒューマニズムの融合に苦しんでいる。ソ連は東欧と共にキリスト教を捨て共産主義となり混迷と苦悩を経験した。最近はヒューマニズムがキリスト教から離れ

ようとしているが、それは自由国家群と共産主義国家群が原爆を抱いて激しく対立する結果を得た。ヒューマニズムあるところ、総て対立相克闘争、排他的闘争があり不安動揺が起きているやに見える。
10日 神道の寛容さ なぜ世界中で日本だけが、世界五大文明を悉く並存せしめているのか。それは日本が島国であり、大陸から離れて大陸諸国のように隣接国との葛藤がなく優れた他国文化のみ受け入れてそれを開花発展らしめ るに適した国土であったからであろう。
また、我が国固有の神道が、他の文化に接して排他的排撃をすることもなく、決してそれらと存立を争わず、極めて寛容な態度を以て迎え入れたことが根本にある。
11日

神道の寛容さ

なぜ世界中で日本だけが、世界五大文明を悉く並存せしめているのか。それは日本が島国であり、大陸から離れて大陸諸国のように隣接国との葛藤がなく優れた他国文化のみ受け入れてそれを開花発展らしめるに適した国土であったからであろう。

また、我が国固有の神道が、他の文化に接して排他的排撃をすることもなく、決してそれらと存立を争わず、極めて寛容な態度を以て迎え入れたことが根本にある。 

12日 無国籍日本人 国籍喪失的日本人が増大している。祖国日本の生命というべき神道と天皇を否定するような勢力が出現していることである。 これは実に我が国の地理的、歴史的、風土的事情を勘案しない、外来性に対する無防備、無警戒によるものであり極めて憂慮深刻な事態となりつつある。
13日 日本の本質・特質 日本の本質や特質を知らずして日本を論じてはならぬ。 日本の特質は、神道・天皇・神社・家の四つである。
神道の原理 神道の原理
14日 宇宙間の物質 宇宙万物はエネルギーと、生命及び、時間空間と物質の諸要素で構成されている。宇宙間に存在する総ての物質は、原子から成り立っており、原子は、陽子、中性子、中間子、電子等の素粒子から成り立っ ている、と自然科学は説明している。
要するに森羅万象は、素粒子の陽子、中性子、中間子電子の組み合わせにより元素、分子ができ、また元素の組み合わせにより物質が出来ている。
15日 ()(すび)

宇宙の万象は、素粒子間の結合から元素と元素の結合、物質相互の結合等すべて「むすび」に始まって「むすび」に終わっているのである。

()(すび)の作用にはその裡に分化現象の陽作用と統一収集の陰作用が相対的に働いて新陳代謝、循環還元、流転流動を続け変化を遂げつつ体系をなしている。
16日 生成化育の働き ()(すび)とは「生成化育」の働きである。
むすびの作用により事物は生成し、その作用を失って事物は崩壊する。
むすびが失われ、事物が崩壊すると同時に変動が起こるが、その変動は、再びむすびの実現に向って進行する。()(すび)とは、宇宙万物を生成化育せしめるエネルギー、生命作用を言うのである。
17日 (あめの)御中主(みなかぬしの)(かみ)

大宇宙の働きの根源、宇宙の大元霊と申すべき存在で、 わが国では日本書紀とか古事記に、神々の出現の冒頭におでましになる原初の神がこの(あめの)御中主(みなかぬしの)(かみ)である。宇宙の中心の神である。

あらゆる生命作用、エネルギー作用の根源で、陰陽作用が起き陽霊作用を古事記では「(たか)御産(みむ)()(ひの)(かみ)」、日本書紀では「高皇産(たかみむす)(ひの)(みこと)」と記されている。陰作用を古事記では「神産(かみむ)()(ひの)(かみ)」、書紀では「神皇産(かみむす)(ひの)(みこと)」と称している。
18日 八百万(やおよろずの)(かみ) 八百万(やおよろずの)(かみ)とは、(あめの)御中主(みなかぬしの)(かみ)千変万化(せんぺんばんか)の働きに対してつけられた名称である。 宇宙の森羅万象の働きは、反則反作用を許さないものであり、人間の営為の及ぶところではない。
19日 国家神道

日本歴史と共に古い。大宝律令(たいほうりつりょう)太政官(だじょうかん)の上に神祇(じんぎかん)をおき、神事祭儀を以て先とするという建前で武家時代まで一貫していた。

明治政府のとった神社行政は神道神社を以て宗祇(そうぎ)となし、これを一般宗教を圏外に置き、欧米諸国に於ける国民精神統一の国家宗教たるキリスト教の地位につけ国家存立の根源とした。
20日 敗戦後の国家神道 国家管理から離脱した神社は、他の宗教と同列となり、宗教的側面が強調されることとなった。だが、神社は村々の氏族や部落と離れては存在しない。ここに神社神道存立の理由が存在する。 他の宗教にない、天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)天津穂嗣(あまつほつぎ)の天命を奉ずる天皇を中心に国民精神統一と結合を図る宗祇宗道が神道であるが故に、他宗教と同列と成り難い。日本の国家・国民・社会の統合と本源的な結びつきがある。
21日 神社神道

祖先を(あが)め敬い(まつ)り、国民の実際生活のうちに存在する宗教として発生したものである。神社中心に血縁関係、地縁関係により結合する部落社会の守護神として崇敬されてきた。

最も原本的なものが「氏神」である。鎮守神(ちんじゅかみ)あるいは産土(うぶすな)(かみ)という。これは農耕社会から起きたもので行事も農耕的で春秋二季の祭典を中心としている。
22日 教派神道 仏教、キリスト教、マホメット教と同様、教祖を中心とする教義伝道布教により救世済民に当る神道のことである。 世界三大宗教と異なり俗信仰から発したものである。お陰参り、霊験大嗣巡拝などで聖書、コーランなどと違い安心立命の卑近なものである。
23日 天皇 天皇は、明治憲法に規定せされた「神聖にして侵すべからず」という権力的皇帝でもなく、また国王でもない。また現憲法に制定された「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるという民選のカイザー即ち大統領でもない。 天津日嗣(あまつひつぎ)高御座(たかみくら)()く「(かみ)御一人(ごいちにん)」の「すめらみこと(天皇)」である。
24日 天津日嗣(あまつひつぎ) 天津日嗣(あまつひつぎ)とは、天津神の御心(おはたらき)を日に日に()け継ぎ、これを(あまね)く世に弘めて万邦兆民(ばんぽうちょうみん)生成化育(せいせいかいく)発展せしめて行くこと。 高御座(たかみくら)とは、この神ながらの道を伝道宣布する中心に位することを言う。
25日 (かみ)御一人(ごいちにん) (かみ)御一人(ごいちにん)とは、天津神(あまつかみ)不二一体(ふじいったい)となり現れることをいう。故に天皇には氏もなく姓もない。万民の御親なのである。 天津神の御自覚を体認せられた天皇は、万民の中心であり、万民悉く天皇の赤子となるのである。 
26日 祭主 神道(かむながらのみち)を顕現する祭主であるということで天津神を(まつ)り、神と一体化し、神となって範を万民に垂れ、すべての人を神にする働きをいうのである。 神道は、祭りと政から成り立っており、その一致を究極の目的としている。
それの実現に当るのが中心であり基本の祭主が天皇なのである。
27日 政教一致とは 我が国の祭政一致と西洋近世史に現れた「政教一致」とを混同してはならない。近代文化が政教分離を原則としている立場から、祭政一致の体制を時代錯誤と非難攻撃する進歩主義文化人がいる。 だが、祭政一致と政教一致とは、その本質が全く違うのである。政教一致とは、政治と宗教の混同を意味する。宗教家が政治権力を濫用して政治をし、また政治家が教会を道具にして宗教を利用して社会的混乱を惹起し人心の頽廃を生む危険性の多い体制を言うので゜ある。
28日 祭政一致 祭政一致とは、人間が神を祭り、神に近づき、神を見習い、神に随って神と一体化し、やがて神となって神の境地を発揮することである。 この神となった精神で生活し、これを民に向って発揮することなのである。
祭と政は表裏の関係であり、内面と外面の関係であって根源は一つである。
29日 祭と政 祭の対象は神であるに対して、政の対象は民である。祭祀と政治はもともと一体のもので、唯その役割、分を異にしているだけのものである。 祭祀は祭主、神主が掌り、政治は大臣、司法、行政、立法官、県市町村長、但し指向するところは同じく祭政一致の原理―神道と天皇に於いて一となる。
30日 天皇の祭祀 祭りの語源は、祭り、(まつり)りこど、(まつろ)う、交る、日待、月待、待合などの「まつ」であり総て一つになるという意味を含む。
神祭りは、神を祭り「神と合一」し神そのものになる事を意味する。天皇は祭祀によりその尊厳性を愈々高からしめ、「神人(しんじん)不二(ふじ)一体(いったてい)」の境地を開き「明津(あきつ)(かみ)」とならせられているのだ。
(みそ)ぎにみそぎ、(はら)いにはらい給ひて神の境地に達せられるが故に
現人神(あらひとがみ)」と仰がれるのである。神の境地に到達され、無私無欲無我になり天下万民の御親として臨まれるから天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)天皇(すめらみこと)と崇め奉られるのである。
31日