女人五徳 その一
男女を問わずと言うべきかも知れないが。
「平素、人と争競せず」が第一だ。
普段は、人と競争しない。婦人は何かと較べたがるが、これは第一にいけないことだ。女房がこんな女性だと一生苦労するだろうな。
「苦難中怨言無し」
苦しみや、難儀をしている最中に、文句や恨み言ばかり並べ立てない女性がいいと言うことだ。
世間の亭主族の最も大きい打撃は、苦難をしている最中に妻子から怨言を聞かされることであろう。
こんな女房がいいと言う逸話がある。
故・湯浅倉平氏の奥さんは賢妻で名の通った人、湯浅氏がまだ若い時の話だが、辞表を叩きつけて家に帰ったら奥さんが玄関に出迎えた。
湯浅氏はぷりぷりして「今日は辞表を出してきたよ」と言ったら、奥さんはニコニコして曰く、「そうですか、それではまた釣りが出来ますね。」と応えたという。湯浅氏は余程嬉しかったらしく、一生自慢にしていたそうだ。
全く逆の話を聞いたことがある。喧嘩っ早いが快男児の某氏、奥さんは中々の美人で才女、二人はしょっちゅう喧嘩していた。地方の長官をしていた時、次官と喧嘩して辞表を叩きつけて帰宅した。玄関で「おい、今日は辞表を叩きつけてきたぞ」と言った。
奥さんの応えの言葉が、「言わんこっちゃない。あんたは頑固だから、いつかはきっとこういうことになると思っていた。これから先、一体どうするんですか」。この時くらい女房の言葉が癪に障ったことはないと遂に離婚してしまった。
苦難中に怨言がない、これは特に女に必要なことである。