12月13日 深山幽谷
うつせみは 数なき身なり山河の
清けきみつつ道を尋ねな
これは大伴家持の歌だが、この現身が数なき、はかない存在であるが故に、せめて山河の清けきを見つつ道を尋ねようとする。この心、この情懐があって初めて人間の生きがいというものがある。
人間は自然を離れ文明化するにつれて、自らの人間らしさを失った。人間らしさとは自然の力・摂理の前に人間自身の無力を自覚し、それらを深めることによって内面生活に安心立命を求めようとする真実の心をいう。古人が道場として深山幽谷を求めたのは非常な意味あってのことだ。 照心語録