女人五徳 その二
「飲食を節す」。
男でも飲食を節することは健康上にも大切なことであり、修養上にとても必要なことである。
某飲暴食、飲食にきたないことくらい健康を害し、徳を傷つけるものはない。
徳川時代の大観相家・水野南北、とても飲食を誡めている。つまみ食いや間食をする女は女房に良くない、特にお母さんは注意せよ。間食やつまみ食いをしない家の娘は必ず「躾」が良い。基本的には飲食はなるべく三度の食事の時にやるのだ。「もったいない」と言いわざわざ食う人がいるが、それこそ食う方が良くないし勿体ない。
「事を聞いて驚喜せず」。
喜ぶことはよいのだが、然し驚喜しない。とんきょうな声を出して嬉しがる人がいるが、こういう人は軽率、軽薄である。
「能く尊敬す」
道徳学、倫理学の集約的な言葉と言える。
宗教や道徳とは何ぞや、
人間の徳の根本的なものは「敬」することである。
同時に、「恥じる」ことである。
人は敬する心があってこそ進歩向上する。
「恥じる」という心があってこそ、「自ら律し」、また「自ら警める」。
この「恥じる心」が発展して道徳になる。
「敬する心」が発展して宗教になるのじゃ。
「恥じる」ということは人間誰でも持っておる筈なのだが、戦後特に近年は消滅した感がある。
少し、人間偉くなると、敬する心を知らぬよになる。
所謂、不敬になってしまう。人を卑しめる、人を侮る。なんとか言うと「ケチ」をつけたがる。
よく尊敬する事を知る女、それの出来る女性、それが立派な人間である。それは男女を問わない。
岫雲斎