1228日 万病根源は「怒り」その三

 液体空気で冷却したガラス管の中に息を吹き込むと、息の中の揮発性物資が固まり、無色に近い液体になる。この人が怒っておると、数分後に管の中に栗色と(かす)が残る。苦痛あるいは悲哀の時は灰色、後悔しておるものは淡紅色になる。この栗色の滓を天竺鼠に注射すると必ず神経過敏になり、激しい嫌悪感の情に駆られておる人の息の滓なら、数分で死んでしまうのだそうだ。一時間の嫌悪の情は80人を殺せる毒素を出し、この毒素は従来の科学の知る限りの最強の猛毒であると。         百朝集