1229日 肝腎(かんじん)(かなめ)

 身業について考えてみますと、大体近頃の人間は、姿勢からして正しくありません。修行盛りの青年・学生でも、ふらふらと妙な恰好をしていて、ちょっと蹴飛ばしたら二つ三つに折れてしまいそうな者が多い。やっぱり背骨が直立して腰が据わり、足が達者でなければいけません。正身でなければいけません。日本人は昔から人を罵るのに「腰抜け」と言いますが、あれは医学・生理学の上からいうても本当で、人間「肝腎要(かん・じん・かなめ)の腰がふらふらしておるようではいけません。そもそも、肝腎要の要という字は、こしと言う字でありまして、後に要に肉月がついて腰の字ができ、腰は身体のかなめに違いありませんから、要の方は専ら()なめ(〇〇)の意味に使われるようになったわけです。だから肝腎要は、肝()・腎()・腰が本当の意味であります。

この三つは健康にとって最も大切な要素であります。中でも腰は上体と下体を結ぶ文字通り要であって、腰が悪いと上下が疎隔し断絶して諸々の不健康の原因になります。また、肝臓は、あらゆる意味で最も大切な器官でありまして、ここから心臓に血液を送り、それが循環系統を通って最後に腎臓に入って浄化され、廃液を便や小水にして出す。正に腎臓は公害除去の大切な浄化装置です。そういう意味で「肝腎要」という語は医学的にも道理にかなった、真理を掴んだおもしろい語であります。     東洋思想十講