1231日 陰膳と現代

 おそらく、最早や日本の女たちは遠く旅している夫に陰膳を据えるようなことは可笑しくて出来なくなっていることであろう。

知識階級の家庭からは急速に神棚も仏壇もなくなってゆくようである。静坐も礼拝も祈りも同様である。かくして人間同士の関係がだんだん浅くなり、人間生活が唯物的になってゆく。それが進歩であり、文化であると思っている知識階級のいかに多いことであろう。科学の進歩と同時に我々はいよいよ深く美しく詩的であり、劇的であり、宗教的でありたいものである。特に婦人の覚醒と教養とに待つこと大なるものがある。              新憂楽志