日本歴史の終わり? 平成12年4月18日 日本海新聞潮流欄に寄稿
 
1.数ヶ月前某紙に専門家が寄稿していたのが西暦3000年の日本の
  人口予想であった。現在の出生率がこのまま推移すると驚くなかれ
  千数百人になると。

2.最近、国連は日本へ警告した。日本は2050年頃から現在の労働力
  を保持する為には毎年一千万人の移民を継続しなくてはならぬと。

3.ここで私は想起した。縄文晩期から弥生前期の二千年前の頃の人口
  の事である。当時の日本列島にどの程度の人間が居住していたので
  あろうか。専門家の推定によると縄文時代が約30万人、弥生前期の
  西暦元年頃が60万人。当時も渡来人が移入していた。そして800年
  経た奈良時代は300万人とある。

4.日本人の優秀性は混血にあると言う。それはこの列島に南方はミ
  クロネシア、東南アジア、中国の特に沿海州、北は朝鮮半島等から
  永年に亘る人口流入による混血の結果とも言われる。

5.中世から近代にかけて国境という概念が確立してしまったが古代は
  人間の交流にパスポートは不要であった。朝鮮半島の百済と北九州
  は将に一衣帯水のオイと呼べる交流であったのであろう。
  太平洋岸には黒潮に乗って南方からやってきた人々が住み着いて
  きた。そして何百年の間に土着の縄文人と同化し日本人として純粋化
  されてきたのが実態であろう。

6.確かに古代史時代は大陸の先進国から文化が到来し先人は学んだ
  が西暦800年代の平安時代には日本独自の文化文明となり室町時
  代には能を初めとしてそれが確固たるものとなって現代に連なってい
  る。

7.人間の混血同化も同様であろう。この列島に住み着いて数百年経ち
  混血が完成し純粋な日本人となってきたのであろう。近代は国家国境
  意識が特段に強くなったので古代の感覚が分からないのだ。

8.このように考えてくると日本人の出生率が下がって人口が減少してく
  ると必然的に移民が増加してくる。新たに混血が増えてくる。日本の
  ように単一民族が長く維持されて純粋化すると優秀さの故に成功し
  経済的に富裕となる。さすれば文化的に究極に達し爛熟しそれ故に
  女性が子供を産まなくなる。現今のように出生率が低下し21世紀後半
  の日本のように再び移民混血が大量に必要となる。歴史の終わりの始まり
  である。二千年前のように大量移民による民族の活性化が必要となる。

9.要するに二千年前の縄文、弥生時代の日本の状況に回帰すると言える
  のではないか。そして人口の真空を埋めるように移民が増えてくる。
  新しい日本の歴史の始まりである。そして更に千年も経過すると平安時代
  のように新移民も同化して新日本人となる。千年単位の壮大なる歴史的
  循環が始まろうとしている。新ミレニアムの意義もここにあるのかも知れない。

10.文明が進むと人間のある一面が退化するが原因は富にあると思う。
  富、別の言葉で言えば”マネーのウイルス”に心身が蝕まれて遂に進取の
  気性を失い自滅構造に入るのは洋の東西を問わない。マネーがあれば
  ほぼ何でも手にいる。人間の発明した”マネーのウイルス”に感染し肉体
  労働を厭うようになり農業をしなくなるとそのシッペガエシを強烈に受ける
  事となる。

11.さて、このような未来が予見される現在若い世代の人達はどう考えるの
   であろうか。

12.若年人口の減少は経済、社会、国際政治に甚大な影響を与え国力は
   スパイラル的に低下する。人口は国力の基礎だ。数年前中国の首相が
   、過去に日本という国があった、となろうと言った。これは決して嘘では
   ないのだ。かかる未来は確定的に予見されていると言うのに成り行き
   任せでよいのであろうか。国の或いは民族の一大事として何とかしなく  
   てはと思わぬのであろうか。政府も政治家も国民も勿論マスコミも何ら
   深刻にこの問題を取り上げない。このまま推移すれば近未来に於いて
   我々は想像以上に社会生活や価値観の激変に遭遇すると思われる。
                                   
          鳥取木鶏クラブ  代表世話人   徳永圀典