伸びる日本女性         

平成12年7月5日 日本海新聞 潮流欄に寄稿


 
女子大生亡国論がかまびすしい時代があったのは昭和50年代迄であったろうか。今は全くその声は消え失せた。もう十年以上前であったか、NHKクローズアップ現代の知的な番組で視聴者を圧倒し続けている国谷裕子氏が海外番組で大活躍していた。その頃、上智大学は新進気鋭の猪口邦子教授達が先端を走っていた。素晴らしい女性達でもはや女子大生亡国論は終わったかなと感じたものである。更に若手では政治家の野田聖子氏は危なげなく郵政大臣を努めたし評論家の桜井よし子氏等多くの識見溢れる優秀な女性が活躍している。自治体も大阪府知事、芦屋市長などは女性だ。日本女性も持てる才能、能力を存分に発揮するようになった。
スポーツ界もそうだ。この4月、水泳の女子選手が次々と世界新記録を難なく達成したり5月のシンクロナイズドスイミングの女性選手達の国際的活躍には目を見張るものがある。肉体的にも能力的にも十分に外国選手と太刀打ち出来て引け目はなさそうだ。もとより戦前迄も素晴らしい日本女性はいたが戦後50年経過して戦前迄のしがらみを完全に抜けて一人の人間として多くの女性が伸び伸びと心身の発達が完成したなと思う。

猪口邦子氏の主人は東大教授だが子供を背負って家事と学問を両立しておられた姿を垣間見た事があるが能力と意欲の高い方は違うと感じていた。経済界でも女性経営者の活躍が目立つようになった。色んな分野でこれからもドンドン能力溢れる女性が台頭するであろう。ごく一般論だが女性は基本的にまじめで真剣に問題に対処しているように思える。それに引き替え最近の男性は、凡てではないが、ナヨナヨと頼りない感じがする。女性のほうが良くても悪くてもイキイキしているように見える。

現役時代を含めて回顧して見る。男性は目的にマジメに徹底すると、線が細いとか、キマジメとか、人付き合いが悪いとかで仲間外れ的になってしまうのを見てきた。それよりゴルフとか麻雀とか、酒とかのつき合いを主眼にした交流で評価されてしまう点があるのではないか。個人的能力が高くても評価されない。ここにナアナアの村社会的な日本男性の姿が浮かび上がる。つきあいが悪いと村八分にされるとの思いがそうさせているのかもしれない。
仕事を徹底的に追及する一方で前述のつきあいをしないと干される。自己の能力を徹底的に高める努力をされたから上述の女性の方達が成功しているのであろう。これからは男性もこのようでなくては外国人に負けてしまう。

以前、私は現役時代に講演会を主催し中央からの講師の選定をしていた。高名な政治評論家とか学者は講演の合間に雑談に興じるし帰途の時間待ちに居酒屋でもつき合った。

グレゴリークラークと言う学者はホンの僅かの待機時間でもタイプを打ちお愛想も言わないし当方の話しかけにも応じない雰囲気があった。自分の目的に真剣に対処し時間の浪費を避ける姿は女性の真剣さと通ずるものかもしれない。

外交でも言うべき事を理路整然と敢然と言っていない日本。戦後の敗戦ショックを受けた人達は米国に位負けして交渉能力のない状態である。
今40台の政治家はそれを越えたであろうか。他国に位負けのない外交をして国益を損傷して欲しくないものである。村社会の甘えを卒業すると言うことは、自己の確立が大切である。全て主体的に合目的にやるという事は甘えが無い事、人に頼らない事、生きる上で泣き言を言わぬ事かもしれない。個の確立であろう。女性が強いのは出産と言う命がけの大仕事のない性にない天性のものかもしれない。

願わくば人の上に立つ女性達が知識技能にとどまらず人の上に立つ在り方も身につけて欲しいと望むものである。
             鳥取木鶏クラブ代表世話人     徳永圀典