国家更生法?適用  平成13年11月1日 日本海新聞潮流に寄稿

去る9月、金融大臣は遂にIMFによる銀行不良債権の特別審査を応諾した。先進国として屈辱的だ。倒産寸前の企業が銀行管理となり徹底的に帳簿を調査され債権債務を審査されるのと同じだ。日本は自前で再建できぬ、言わば国家更生法?適用だ。敗戦直後、当事者能力無き日本はIMFの資金と政策指導を受け焦土から復興を果たした。再びIMFの指導を受けるのはマネーの焦土であり戦後のマネー繁栄は元の木阿弥になった。去る3月本欄で指摘した通りになった。マネー大国がマネーの混乱を自己克服できず世界マネーの番人に収拾を依頼したのだ。

これは要するに、戦後の経済的成功の結果、日本は世界のリーダーたる資格も力もないのに余りにも繁栄し世界の成り立つ構造や屋台骨を揺るがしたのだ。世界金融資産の三分一を日本人が保有する一人勝ちである。世界の金持ちに相応しい力も能力もない孤島の民が金を持ちすぎた。だから戦争中の言いがかりやら不法難民強盗が押し寄せ日本人から金を強奪しようとする。これが近年の日本を取り巻く環境だ。貧乏になれば難民にも外国の強盗にも相手にされなくなるであろう。

戦後を時系列的に整理してみる。1945年敗戦、IMFにより日本再建が始まる。当時の1ドル360円はマッカーサーの決定だが理論的背景はなく円は360度だからという程度。この安い為替でも日本人は必死に働いて克服し固定相場で大きく富を増やす。余りの見事な成功に戦勝国米国は手も足も出なくなる。そこで米国は日本を越えて中国と国交回復、ニクソンショックでこれが1972年。この時にドルは金との兌換を廃止し為替は変動相場制となる。360円では米国はとても日本に太刀打ち出来なくなったのだ。

為替のフロートを重ねるも米国は巧く立ち直れない。そこで次は政治力で日本屈服を試みる。時は竹下蔵相、彼はプラザでベーカー氏にいとも簡単に1ドル260円に応じた、1990年の事。ここでも莫大な国富を消滅させた。これで米国に恩を売り彼の政治力の背景となったと思える。経済成長中の日本はこの円高ショックは吸収できた。事後、歴史的な円高の恩恵を享受した。

一方で公共投資400兆円を米国に約束させられ財政破綻の端緒を作らされた。国民もその恩恵を受けたが、国債異常累積の元祖だ。それがバブル崩壊、日本破綻の導火線となろうとは政治家、大蔵省初め当時の日本人はバブル踊りで気づかない。国家運営と近未来予測の拙劣を見る。

側面からの日本資本締め付けの対象は欧米で猛威を振るう日本の銀行。邦銀の薄資に目をつけ新しいルールBIS基準8%を日本に突きつけて10年がかりで銀行にトドメをさした。現在の株式不況の遠因がここにある。欧米の深慮遠謀に気づかないで結局作らされたバブルの破綻原因ともなる。

1997年、遂にマネーウォーに敗北。親方日の丸の与野党の政治家はマネーのド素人、右往左往し米国サマーズ長官に罵倒されて漸く公的資金導入。無駄な時間を費やし巨大なロスを招いた。そんな時に金融ビッグバンをやる愚かしさ、彼等に国益背任罪を問いたい。現在はその延長線上の断末魔にすぎない。米国から見れば既定路線の姿ではないか。私には論理の必然の結末に見える。9月末決算からの英米会計基準適用はその駄目押しだ。これで日本の大銀行は丸裸となる。ここまでになるとは本当に情けない。戦略のある米国は良きにつけ悪しきにつけ凄い国だ。

今回のテロ事件、国家としての戦略的果断さは見事だ。政府も、与野党も、国民も、そしてマスコミもイザという時には一つになる。アメリカ人になりたいと言う日本人が出ても不思議でないほど国益を守る。日本の政治家は小田原評定と泥縄ばかり、大マスメディアは無国籍に近く国民は酷い目にあっている。

さて、テロの瞬間、世界は一瞬にして別の世界に入った。米国の新技術が人類史上に大変化を齎す大きい一歩を踏み出し再び数年で景気を回復し世界をリードするのか。或いは米国の繁栄は終了し世界経済はカオスに入るのか。いずれにせよ、日本は倒産的状態のまま取り残される。否、円そのものの存在の危機が到来しつつあるのかも。自己変革に失敗したこの10年の必然の結論である。
産業革命以来の世界的大変革に国として乗り遅れ戦後の繁栄は一巻の終わりでお陀仏さんとなった。米国はIMFを楯に巧妙に日本経済を牛耳るであろう。

これからは敗戦直後同様の事態が待ち受けている。あの時は、明治の精神遺産もあり志も精神力も充分であった。近年の日本は国家として機能していないし、日教組と旧社会党、一部マスコミなどの反日的プロパガンダの影響で日本国のアイデンティティも消失した。再びリップンチェンシンを復活し再生できるであろうか。
                 鳥取木鶏研究会 代表 徳永圀典