かくして日本は破綻する 日本海新聞 平成13年3月22日 潮流に掲載


問題の解決には[先ず実態を把握する。原因を究明する。対策を決定する。棄てるものは思いっきり棄てる。そして胆を据え断固とした不退転の決意で実行する。]現役の管理者時代は、このようにして幾多の問題を辞表を懐にして解決してきた。

国家の問題でもこの原理は通用する。私のような一庶民すら日本国の行く末を憂う日々である。国家の管理者は総理、政府そして政治家だ。中枢官僚も同様である。彼らは国の真の実態を知っていよう。民間には多くの専門家や識者やシンクタンクもある。これら頭のいい優秀な人々が沢山いるのに、ここ10年は右往左往して真の解決につながる政策が打ち出されない。自己変革不能は滅びの原理である。日本国は、矢張りなり行き任せの玉砕型で進んでいるのではないか。どおしてなのであろう。

誰が考えても、国の支出の80兆円に対して税収が50兆円というのでは国を維持できるわけがをない。対策は簡単だ[入るを計り出るを制する]、これしかあるまい。それを実行しなくてはわが国の破綻は明白なのに、しようともしない上述の優秀な人達。
例え一時的にどん底でも数年の辛抱で曙光が見えるのに、どの政党も、どの政治家もどの大臣も総理も真実を国民にさらして訴えない。国民も声を挙げない。不思議な国民、日本人だ。国の管理者は国民が1200兆円のカネを貯めているからそれを狙っているとしか思えない。最も安易なずるい手法が彼らの中に暗々裏にあるのではないか。

私は二、三年前から本欄で、このままでは
@ご破算か A大インフレか B大増税のどれかに行き着くと指摘してきた。円が国際通貨となった今日、外国人も保有する円の封鎖は出来まい。大インフレは、政府初め政治家も企業家も内心最も望むものであろうが、誰独り言い出す事はできまい。さすれば、このまま成り行きにまかせて大増税でこの超財政赤字を消すしか手段はないのであろう。

自己変革をギブアップして遂に一部識者の中にはIMF統治という外圧しか変革できまいという人が現われだした。振り返えれば明治維新は米国ペリーという外圧で国を開いた。開いた後はまっしぐらに西欧を追い付き追い越せで成功した。挙げ句の果ては敗戦、敗戦後の税制も憲法も大変革はマッカーサーという外圧でしかできなかった。そして、先年のマネー大混乱も米国サマーズ長官の強烈な外圧でしか国論が統一できなかった。そして巨大な国富を喪失した。変革が出来ず不況が10年経過してもままならぬ日本に世界は呆れ果てている。国民として国家としての矜持、誇りがあれば自らの事は自ら始末しなくてはならぬ。その矜持すら失い政治家も中枢官僚も矢面に立ち国民にあるべき姿を訴えない。一時の貧乏や辛抱は我慢出来る筈だ。そして、政治家や官僚の私腹肥やしはやまない。与野党とも、政争を超え党派を越え国の真の危機に対処できない日本国。戦後の経済的成功の結果、日本国が世界のリーダーの資格も力もないのに余りにも成功し繁栄し過ぎて、世界の成り立っている構造、屋台骨すら揺るがしかねない迄になったのが今日の不幸の始まりであろう。
応分の所で生きておるべきであった。それは技術的にもカネについてでもである。能力もないのにカネを持ちすぎた日本の悲劇であろう。現今はその調整課程の終わりという処か。米国の言いなりに国債大増発による公共投資もその遠因の一つであろう。大増税という安易な手段は大反対だ。郵便局を私は歴史的に愛している。然し、市場経済のビッグバンで民間金融機関は弱肉強食の世界に投げ込まれているのに250兆円という郵貯が市場から隔離されているのは論理矛盾だ。大蔵経由財投で国の金融機関、特殊法人等々に行きている郵貯のカネは腐り切り見えない不良債権となっている。

未曾有の国家的閉塞状態となっているわが国である。誰独りとして口火を切って大手術を訴えないのは、間違いなく大波乱が起きどおにもならないので自ら言い出せないのかもしれない。成り行きに任せてIMFという外圧で事の抜本的解決を図ろうとする深慮遠謀があるとしか思えなくなってきた。識者は、あと3−5年しか立ち直りの時間的猶予はないと言う。わが国は成り行き任せのお得意の玉砕しかないのであろうか。情けない国、日本。

            鳥取木鶏クラブ 代表 徳永圀典