平成の小泉維新

日本海新聞 潮流コラムに掲載 平成13年6月19日 火曜日



国家激動期に人材は現われる。小泉氏は幕末の高杉晋作に見える、顔つきも創造的破壊力も。新政権は政権交代と言える。わが国は、大臣も政治家も、国家官僚等も命懸けでなくては内外の難問解決は難しい。凡て行き詰まり断崖絶壁にいる日本国だ。

@小泉首相が総裁選挙の時、マナジリを決した顔つきと、命懸けでやるという真剣な言葉に国民は心を動かしたと思う。命懸けと言った総理は初めてだ。この10年の10人の総理達に、このよう人物はなく甘ちゃん総理ばかりで真剣に国家、国益に対処したとは思えなかった。グループで評判の良い程度の人物であった。平成に入り11人目の小泉総理だが、この歴史的、大変革期に相応しい人物である。

総理就任初会見の時、原稿もなく真剣勝負のようで大変良かったし、哲学もあった。冒頭から孟子の引用である。「天の将に大任を是の人に降さんとするや、必ず先ず其の心志を苦しめ、其の筋骨を労せしめ、その体膚を飢えしめ、其の身を空乏にし、行うこと其の成さんとする所に払乱せしむ」。この決意や良し。このような気骨と気概溢れる総理は激動時の宰相に適している。指導者の在り方を論ずる良い機会なのに総理の精神哲学を解説し敷衍しようとしないのはマスコミの怠慢である。トップというのは一朝一夕に可能ではない、日ごろから、もし自分がトップになれば、こうすると言う志と気概を持たねばならない。小泉総理にはそれがあった。

就任直後から非難する野党幹部の器量は小さい。明治の政治家は、政敵でも、国家にとり良いことは断固として支援した。野党の幹部は国家指導者として不適任だ。民主党党首訪韓の教科書問題でも証明された。同党は総理就任日からインターネットメールで小泉総理を中傷し誹謗している。
同党の若手議員は明治の元勲のような発言をしているのに。総理は内閣が英知を傾けて出してきた選択肢を最終決断し総合力を引き出せばいい。総理は65歳で引退すると明言したのも爽快であり、80歳で議員稼業をやっている連中は恥ずかしい思いを抱いたであろう。出処進退が明白で、いさぎ良いのは日本人好みでもある。

A宮沢氏の如く勉強が出来て知識が豊富でも、胆識のないのは総理として落第であった。私なら、二度目の大蔵大臣をやる時は歴史に残る蔵相を目指して命懸けでやったであろう。単なる好々爺の評論家にすぎない。彼の古典の知識は指導者として少しも役立たなかった。

B勉強は出来なくても頭は良くなくてはトップとしては不適任である。レーガン、チャーチル、リンカーン等は勉強はできなかったが英雄と言われた。米国の政権首脳は現場の生き馬の目を剥く世界から登壇した人達ばかりだし中国は革命を生き抜いた人達だ。大学の成績が良い程度のままの、現実社会を知らない、親方日の丸では列強に太刀打ちできない。一喝したら態度を変えると米国マスコミに嘲笑された宮沢氏は国家指導者として不適であった。

C
田中外相は就任記者会見で、自分の役割は、国家国民の利益を先ず追求した上で外国との友好を探るという趣旨であった。就任会見で、自分の任務の使命と原則を明快に述べた大臣も過去に私の知る限りいない。これは組織でも、いかなるポストでも大変重要な事柄である。何故ならば、夫々のポストに相応しい使命と原理、原則があるからだ。
彼女は、父親のお蔭で、大きい舞台を知っているので外国の首脳に対しても位負けしなくてすみそうだ。モミ手の河野と格段に違う。外交は人物次第であり、相手に飲み込まれたらおしまいだ。敗戦で国家の矜持を失った多くの政治家が外国との交渉で位負けし悲しい思いをしてきた。もうそれはお払い箱にして欲しい。

D石原大臣は任命された時に外郭団体の整理統合に関して、総理に本気ですかと問うた。総理は本気と答え、更にイザという時は俺に言え、俺がやると答えた。これも素晴らしい。部下の出来ぬ事は上司がやるのが名リーダーだ。今までのいい格好しの総理経験者は恥ずかしい思いであろう。日本の巨大なガン細胞となっている外郭団体にいかにメスを入れるか。慎太郎に鍛えられて育った新大臣に大いに期待したい。

E私は日本を愛している。私は右翼であろうか。否、普通の日本人である。自分の国を愛し、自分の国の利益を追求し他国から侮られないように願う事が右翼とか右傾化であろうか。中国でも韓国でもどこの国民も自分の国を愛している。こんなステレオタイプの認識はおかしい。右翼とか右傾化と愛国は同義語ではない。保守とは自分の国の伝統とか物の考え方を尊重する立場であろう。私は外国の良い所も尊重する。

F今の日本は倒産に近い状況にある。そんなときはお家の一大事として家族が力を合わせてやるものだ。国家あっての国民という事が21世紀には次第に明白となろう。小泉首相で日本の暗雲を晴らして欲しい。                       鳥取木鶏研究会 代表 徳永圀典