日本海新聞潮流寄稿 平成153月5日

二千年の文明

「日本は開闢より、いままで数千年になりたることにて、すでに人々も礼儀を知り、文明国というべし。ただ日本にて急務とするは、百工技術法律なり、いかがとなれば、欧米各国に後れたることは、右の事件のみ、教法は決して他の宗旨を採用せずともよかるべし、日本古来の教法にて足れり」。

要するに、欧米には技術と近代的法律が後れているだけだ、国民の礼儀も宗教も他国から学ぶ必要はない、既に
2千年の成熟した文明を持つ日本だ、の意である。廃藩置県のあった明治4年、1871年の維新早々、国の骨格を研究する為に欧米諸国を歴訪した使節団の一員、佐々木高行の言である。

鎖国三百年にしてこの高邁なる洞察と認識であり、絢爛たる西洋文化に触れても、自己を確立しおり日本人のアイデンティティは微動だにしていない。それ故に、欧米国民は、日本人は、我々が未開で裸で暮らしていた頃から政府も法律も勝れた文化芸術国であったと認識し畏敬心を持った。礼儀も正しいしマナーもよい日本の武士、淑女に感動している。

それから
126年後の平成9年、ブレジンスキー元米国大統領補佐官の言葉、「日本は事実上の米国保護国である」。保護国とは、実質的な属国である。

なぜ、そうなったか、国家の安全が米国依存である上に国民の精神が自立、独立していないからだ。独立には自尊の精神的な要素が絶対条件である。

現今日本の現状はと言えば「敗戦後
60年近くなるも日本国としての自己を確立せず、国の威厳もなく、道義無き隣国からは国民を拉致され、政治家も国家も25年も放置して国民を守らない。中、韓両国からは内政干渉される。米国押しつけ憲法の改定論議も遅々として進まない。

二千年の文明国たる所以も誇りも知らぬ、礼儀知らずの壮、青少年が巷に溢れ、物質中心の米国文化、経済の怒涛に翻弄され、アイデンティティなき流浪の民の様相」を呈している。佐々木高行のあの矜持は、今いずこへ。

開国以来二千年、血と汗で作り上げた日本国の現状は惨憺にして無残な様相で先祖様に申し訳けないではないか。なぜ、このようになったのか。

つらつら思うに、この百年間に大きく二つの段階がある。

最初は、明治の西洋かぶれである。佐々木の指摘を忘れた浅薄な舶来至上主義、言い換えれば物質至上主義が日本伝来の質の高い文化を容赦なく駆逐した。而れども、精神遺産は形無きが故に生命が長く、今日近くまで細々と残っているが戦後
60年にして風前の灯と言い得る。

そして第二は、決定的な対米敗戦後で、米国の物量思想に席巻されてしまったままだ。明治の精神的遺産もあと僅か数年の寿命であろう。ここらで日本人たるアイデンティティを断然回復しないと、未来永劫、たぐい稀な人類の誇りうる日本の二千年も戦後の経済繁栄も消滅は間違いない。

なぜ、ここまで日本が落ちたのか。

@精神面では、自国の歴史に誇りがない上に国史すら学ばない。そして米国流物カブレに尽きる。

A国の歴史に誇りがないから、戦勝国米国が最高に見える国民が多い。技術以外は日本のほうが文明度は高いと欧米文化を喝破した人物もいた明治初年であったのに西洋思想に飲み込まれ敗戦後は更に怒涛の如く米国にのめり込んだ。米国は国内で拳銃保有を許す非文明。外国ブランドを盲信するが日本の技術は世界最高レベル。各般に亙り日本人のレベルは高いのに自分を見下げ、自虐し国の誇りを捨ててしまった。それは日本国自身を知らないが故である。
叉、国民が欧米人の本質を知らなさ過ぎるのも大問題。ナイーブな日本人とは純情、純粋に非ず、お馬鹿さんの大甘に近い。

その欧米諸国、英国現王室の開祖は
1066年、アメリカ独立は1776年に過ぎない。米国は英国から独立、英国王室の先祖は海賊であった事を誇る。

重要人物のVIPはVERY IMPORTANT PERSON、海賊が略奪し輸入、IMPORTしてくるから重要人物という。

そう、欧米は世界を植民地と化し、搾取、略奪の歴史を
5百年続けた。将に略奪資本主義といえる。鳥取木鶏クラブ 代表世話人 徳永圀典